雪による人身事故が続く。犠牲の多くは高齢者だ。「屋根の雪下ろし作業は2人以上で。必ず命綱を」。呼び掛けがむなしく聞こえる。
今冬は東北や北陸各県が大雪に見舞われている。例年の数倍の積雪の所もあるようだ。重い雪につぶされた建物がテレビ画面に映っていた。自衛隊の災害出動が行われ、学校の屋根の雪下ろしや高齢者など要支援家庭の除雪が行われているが、降雪に追いつかない。雪質が軽いといわれる北海道でも危険は変わらない。空知など豪雪地帯のほか、後志や道東で高齢者の事故が報道されている。朝刊の報道では北海道を含めて9道県の20人以上が犠牲になっている。
屋根から雪もろともに転落、すっぽりと埋まった経験を持つ知人がいる。中学生の頃のことだ。叫んでも声は雪に吸い込まれ返事が聞こえない。「もう駄目かと思った」そうだ。野球をしている腕力があったから無我夢中で雪をかき脱出できた。
農山村では独居の高齢者が増えている。隣家は遠く、子どもや孫はもっともっと遠い。2人以上を確保できるなら誰も命は落とさない。ようやく人数を確保できても、2人とも雪の下敷きになった事故もある。軒下に行くなというが、軒下の雪を処理しなければ雪と氷が窓を割ってなだれ込む。命綱を用意しても、有効に、安全に生かすためには技術や別の設備が必要だ。きのうからは暖気の到来。危険な「自助」が広がる。支援の仕組みをつくらなければ。(水)









