歌って何なのだろう。こんなにも心を動かすのは詞なのか旋律なのか。先日、阪神・淡路大震災を振り返るNHK・BS1の「しあわせ運べるように―神戸が生んだ奇跡の歌の物語」を見て考えた。
「しあわせ―」は、大震災直後、神戸市内の小学校の音楽教諭だった臼井真さんが作詞・作曲した。ラジオやテレビで何度か聴いただけなのに「地震にも負けない 強い心をもって―」と始まるこの歌を聴くたびに胸が熱くなる。まだ音程の定まらない子どもたちの合唱の声にも情けないほど涙腺が緩む。「亡くなった方々のぶんも 毎日を大切に生きてゆこう」「傷ついた神戸を もとの姿に もどそう」。飾らず分かりやすい言葉の連なりに心が揺さぶられる。あの日の朝、テレビ画面に映っていた神戸の惨状や神戸出身の同業の記者が大量のトイレットペーパーを持って帰省していくまでのあれこれを思い出す。
歌はその後、大地震の起きた福島や新潟、熊本などで、歌詞の「神戸」の部分を山古志、ふるさとなどに変えて、子どもたちによって歌い継がれてきた。中国やイランなど外国にもあの旋律が広がっているという。
あすの朝は、26回目の「1・17」の朝。子どもたちの合唱が響きわたる一日になる。世界でも、日本でも、地震は続く。子どもたちの歌う優しく力強い詞をかみしめ、万一への備えを確かめながら、6434人(理科年表2021)の犠牲者の無念をしのぶ一日にしたい。(水)









