厚真猟銃死事件から10年、時効迎え遺族に悲しみ 「逃げ得にしてほしくない」

厚真猟銃死事件から10年、時効迎え遺族に悲しみ 「逃げ得にしてほしくない」
勝彦さんの遺影に手を合わせる母の勝子さん

 厚真町内の山林で2011年2月、安平町の林業作業員新渡戸勝彦さん(当時45)が、何者かが放った猟銃の弾に当たって死亡した事件から4日で丸10年となり、業務上過失致死罪の公訴時効の日を迎えた。この間、苫小牧署はハンターによる誤射の可能性が高いとみて捜査を進めていたが、今なお事件は未解決のまま。遺族は「ただただ、残念」と悔しさをにじませる。

 「もう10年たつのか。早いな」。

 勝彦さんの母勝子さん(77)は悲しみや怒りを懸命に押し殺しながら、深くため息をついた。「何年たっても忘れられないですよ。撃った人が名乗り出て来てくれれば気持ちも和らぐのかもしれないが、出て来なければ、死ぬまでその思いを持っていなければいけない。悔しいというか、何と言っていいのか」と噴る。父義博さん(78)がその隣で「なかなか(犯人が)見つからないもんだね。警察も一生懸命捜査してくれているのだが」とつぶやいた。現在は自身の体調不良も重なり、やり切れない思いだけが募る。

 事件が起きたのは10年前の2月4日、厚真町市街地から北東に向かって約8キロに位置する桜丘の山林内。事件当時、2人組のハンターが青色系のRV車(レジャー用多目的車)で現場付近から立ち去るのが目撃されているが、その後、犯人が名乗り出て来ることはなかった。「2人でいたのだから、(事件のことを)隠しているのでは」。そんな思いさえ込み上げてくる。

 苫小牧署によると、事件発生からこの10年にわたって、延べ1万人ほどの捜査員が関わり、猟銃保持者ら約3300人への聞き取りなど懸命な捜査に当たってきた。約110件の情報が寄せられたが、薬きょうも銃弾も見つからず、いまだ犯人逮捕には至っていない。10年の月日とともに情報は少なくなり、無情にも4日午前0時に時効が成立した。

 しかし、遺族にとって「時効の成立は関係ない」。警察からは今後も殺人罪の容疑で引き続き捜査を続けると聞いている。勝子さんは「親としては(犯人に)出て来てもらい、償ってほしい。絶対に逃げ得にはしてほしくない」と切実に訴えている。

 厚真猟銃死事件 2011年2月4日午前9時50分ごろ、厚真町市街地から北東側にある町内桜丘の山林で、安平町早来の林業作業員新渡戸勝彦さんが倒れているのを仲間の作業員が発見した。死因はライフルの弾丸が右脇腹から左胸を貫通したことによる失血死。現場から約200メートル離れた町道で、新渡戸さんの同僚が「危ないだろ」と注意した後、オレンジ色のジャンパー、チョッキを着たハンター2人が青色系のレジャー用多目的車(RV)で走り去るのが目撃されている。

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