収蔵資料展「イコロ」第3期始まる 国立アイヌ民族博物館

新たに展示したアットゥシ。珍しい技法で刺しゅうを施した着物もある

 白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)中核施設・国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長)で、収蔵資料展「イコロ―資料にみる素材と技―」の第3期が始まった。展示物を一部入れ替え、異なるタイプのアットゥシ(樹皮衣)など希少な資料の数々を紹介。CT(コンピューター断層撮影装置)など科学分析装置を駆使し、資料の構造や製作技術を明らかにした成果も伝えている。

 昨年12月1日に開幕した同展は、布、ガマ、木材、漆、金属、紙の素材別6テーマでアイヌ民族の生活用具など80点余りを展示。科学分析による研究成果も紹介する内容とし、3期に分けて企画した。

 第2期(2月2日~3月21日)に続く第3期は、衣服やござなど41点を替えて3月30日にスタート。アイヌ文化伝承者・織田ステノさん(1902~94年)が1970年代に白老町で製作したござ、アイヌ民族が和人との交易で入手したとみられる真ちゅう製のトゥキ(杯)やタカイサラ(天目台)といった貴重な資料を新たに並べた。

 第3期の目玉の一つは、オヒョウなど樹木の内皮を糸にし、織機で布を織り、着物に仕立てたアットゥシ4点。それぞれ袖の形や縫い付け方などに違いがあり、珍しい技法で文様の刺しゅうを施した着物もある。一般的なイカラリ(駒縫い)、オホカラ(鎖縫い)とは異なる糸や縫い方で刺しゅうを施しており、北嶋イサイカ学芸員は「この技法を使ったアイヌ文様資料の確認は数少ない」と言う。デジタルマイクロスコープで拡大した画像パネルも紹介している。

 カンピ(紙)のコーナーでは、幕末から明治初期に活躍した絵師平沢屏山(1822~76年)のアイヌ絵「酒宴図」(1867年制作)を展示。作品に使われている鮮やかな青や緑の絵の具は、19世紀にヨーロッパで合成された人造顔料と推定されることを明らかにした科学分析調査の結果も伝えている。このほか、江戸時代の絵師小玉貞良が約250年前に制作した「蝦夷国風図絵」(儀礼の後に酒宴を行う人びと)なども目を引く。

 第3期は5月23日まで。研究員や学芸員が展示物を解説する計3回のイベントも予定している。博物館の入館料は、ウポポイ入場料(大人1200円、高校生600円、中学生以下無料)に含む。入館は事前予約が必要で、詳しくはホームページに掲載している。

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