新型コロナウイルスの感染を恐れて出無精になり、ご多分に漏れず拙宅の断捨離を少しずつ進めている。そんな時に書棚で見つけた本が「指導者の条件―人心の妙味に思う」(PHP研究所発行)。松下電器(現在のパナソニック)を一代で築き上げ、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏の著書だ。
1975年に出版され、2006年に新装版、14年に新書版が発行された。経営のハウツー本として多くの人に長く愛読されてきたことをうかがわせる。
改めて目を通すと、中国や日本の先人の言行を紹介しながら指導者のあるべき姿を「102カ条」にまとめている。「指導者は常に将来を予見して手を打たねばならない」「指導者は熱意において最高のものを持たなければならない」などの小見出しに、過去の出来事を交えながら上に立つ者の心構えを説く。
松下氏は「優れた指導者がいれば国は栄え、そうでなければ混乱し、衰えていく。会社も社長次第で良くも悪くもなる」旨を述べ、「組織の運営がうまくいくかいかないかは、ある意味その指導者一人にかかっている」と言い切る。
国内のコロナ感染者は今、変異株が猛威を振るう。4都府県への緊急事態宣言も人流にほとんど影響が見られない。松下氏の書には「指導者は常に自分の考えを訴えなければならない」ともある。訴えは国民の心に響いているか。指導者の予見、熱意はどうか、を考える。(教)









