苫小牧市中心街で1909(明治42)年から続く老舗のいとう履物店(大町1)が、10月末で閉店することになった。3代目店主の伊藤謙一さん(81)は「後継者不在と高齢」を理由に挙げ、「3代にわたってやってこられたのは店を愛してくださった皆さんのおかげ」と感謝する。常連客らに惜しまれながら、112年の歴史に幕を下ろす。
店は謙一さんの祖父の故・栄吉さんが苫小牧町大通1(現在の幸町1)で、げたから洋品雑貨までを扱う小間物屋を開業したのが始まり。屋号は山一で、巴屋の名で親しまれた。
今月、発生から100年を迎えた「コイノボリ大火」で被災。3度の移転を経て、現在の大町に店を構えた。戦時中は物資不足のため紙製の鼻緒を使わざるを得なかったり、昭和後期から平成にかけての大型店台頭で商店街自体が苦境に立たされたりと、幾多の試練を乗り越えながら営業を続けてきた。
げたの鼻緒をすげたり、金具を打ち込むなどの修復作業は、高校卒業後に修業した札幌狸小路の靴屋や父の故・一男さんから学んだ技術。「30分もあれば、すげてみせる」という謙一さんだが、近年は全国的な職人の減少で国産の部品を入手しづらくなり、「満足のいく品を提供できなくなる前に(閉店を)決断したかった」と打ち明ける。「この仕事が好きで、もう少し若かったらやめたりしない」とも。
二人三脚で店を切り盛りしてきた妻のスミヱさん(76)も「使い捨ての時代の中、全道、全国から修繕依頼が入り今日までやってこられた。でも年にはかなわない」と寂しそうだ。
創業100年の2009年を過ぎた頃から閉店を意識し「お客さんの応援を背に、もう1年という気持ちで続けてきた」と謙一さん。両手の人さし指は長年の作業によって第1関節から反るように曲がっており、「結ぶ力が入らず体力の限界を感じていた」と話す。
45年来の常連という若草町の女性(76)は「気が向けば雑談をしに、ここへ足を運ぶのが日常だった。気軽に交流できる店がまた一つ減ってしまう」と残念がる。
6月から在庫品を3~5割引きにする閉店セールを計画しており、「感謝を込めた最後の奉仕としたい」と謙一さん。セールは商品が売り切れ次第終了する。
店内の一角に売り場を構える創業102年目のかまぼこ店「かね彦」も5月末で閉店予定という。



















