登別温泉に大打撃 緊急事態宣言 観光客の姿消える ホテルや土産店から悲鳴

緊急事態宣言の発令で観光客の姿が消えた登別温泉街

 新型コロナウイルス感染者の急増は、道内有数の観光地・登別温泉にも暗い影を落としている。感染拡大に伴う国の緊急事態宣言が発令された16日以降、温泉街からぱたりと観光客の姿が消えた。「いつまで我慢すればいいのだろう」。ホテルや土産店から悲鳴が上がる。

 宣言発令から3日目の18日、温泉街の通りには人影がなく、異様な静けさに包まれていた。シャッターを下ろし、張り紙で休業を知らせる飲食店や土産店、ドラッグストアなどが目に付く。登別国際観光コンベンション協会が管理する地獄谷の遊歩道や泉源公園、駐車場にもロープなどが張られ、立ち入り禁止に。登別温泉を代表するホテル・第一滝本館にも「臨時休業」の看板が掲げられ、巨大な建物に人影は見られない。

 トーホウリゾートが運営する旅亭花ゆらやホテルまほろばなどのホテルも続々と営業を休止。ひと頃は年間120万人の宿泊者を数えた登別温泉のにぎわいは消え、昨年春の緊急事態宣言時と同様にひっそりとした光景が広がっていた。

 登別温泉への客足は、宿泊料金などが割り引きになるGoTo(ゴートゥー)キャンペーンなど、新型コロナで冷え込んだ観光需要の回復を狙った施策で徐々に戻りつつあった。今年のゴールデンウィーク中は多くの観光客がやって来たものの、再び動きが止まった。

 温泉街で60年近く営業している老舗土産店・貴泉堂本店の店主・吉田光雄さん(81)は「観光客が少し増えてきた矢先の緊急事態宣言。またしばらくは駄目だろうね」とため息をついた。国や道などによる観光需要の喚起策があっても、コロナ禍の中で温泉街の客足はなかなか元の水準まで回復しない。同店も昨年の売り上げは以前の2、3割程度に落ち込んだ。「やはり外国人観光客が戻って来なければ、ホテルも店も経営的に厳しい。われわれはいつまで我慢しなければいけないのか」と苦悩の表情を浮かべた。

 温泉街で営業するホテルの担当者は「とにかく世界中でワクチン接種を推進して流行を抑え込まなければ、日本の観光業界は沈没してしまう」と危機感を募らせる。登別市の2020年度上期(昨年4~9月)の観光客入り込み数は約48万7000人。コロナの影響で前年同期の4分の1と激減した。担当者は「今年度も厳しさは続くだろう。行政の支援策がなければ、ホテル経営は維持できなくなる」と憂える。

 温泉街の周辺にある観光施設のぼりべつクマ牧場、登別伊達時代村、登別マリンパークニクスも、緊急事態宣言を受けて17日から31日までの期間で臨時休業に入った。登別マリンパークの須川英治支配人は「生き物を飼育している施設だけに、餌代など日々の管理コストを減らすことはできない。だから休園は経営に直接的な打撃をもたらす」と話し、感染流行の落ち着きを願うばかりだ。

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