「責任重く受け止める」 差別的表現問題で陳謝 道アイヌ協会総会 日本テレビ社長

「責任重く受け止める」 差別的表現問題で陳謝 道アイヌ協会総会 日本テレビ社長
再発防止策などを説明する日本テレビの小杉善信社長(右)。左は北海道アイヌ協会の大川勝理事長

 日本テレビ系列が3月に放送した情報番組でアイヌ民族を傷つける差別的な表現があった問題で、同社の小杉善信社長が6日に札幌市内で開かれた北海道アイヌ協会(大川勝理事長)の総会に出席し、謝罪した。小杉社長は「放送した言葉が直接的な差別的表現であることの認識が欠如していた」とし、番組チェック体制の強化など再発防止に努める考えを示した。

 道内各地域のアイヌ協会会長らが集まった総会には、道アイヌ協会の要請に応じて小杉社長をはじめ、同社役員ら5人が出席。冒頭、大川理事長=新ひだか町=が「アイヌ民族の人権や尊厳に関わる重大な問題が起きたことは極めて残念」と述べ、番組制作の経緯や再発防止策の説明を求めた。

 これを受けて小杉社長は「アイヌ民族の皆さまを深く傷つけたことに深くおわびしたい」と陳謝。続けて「アイヌ民族が差別を受けてきたことへの理解が足りなかった」とし、「基本的人権の尊重が求められるマスメディアが差別的表現を放送してしまい、その責任を重く受け止めている」と述べた。

 原因については「放送前のチェック機能が働かなかったため」とし、再発防止に向けて「生放送番組の内容について可能な限り事前にチェックする体制を構築した」と説明。今回の不適切表現をめぐり、第三者機関の放送倫理・番組向上機構(BPO)が審議を行っており、「今後提示されるBPOの意見を重く受け止めて番組制作に生かしたい。また、今回の問題の検証番組も制作する」とした。

 2019年5月にアイヌ民族を先住民族と法的に位置付けたアイヌ施策推進法が施行され、昨年7月には白老町に民族共生象徴空間(ウポポイ)が開設されるなど、「皆さまの長年にわたる活動でアイヌ民族の地位向上と理解促進の施策がようやく進み始めたさなかに、私たちの放送が水を差し、時計の針を戻してしまったことへの責任を痛感している」と語り、改めて頭を下げた。

 問題の番組は3月12日午前に放送された「スッキリ」。アイヌ民族の女性を描いたドキュメンタリー作品の紹介後、お笑い芸人がアイヌ民族を動物に例える表現をした。道アイヌ協会は人権問題と捉え、放送翌日に大川理事長、中村吉雄副理事長=千歳市=、加藤忠常務理事=白老町=による3役緊急会議を開き、対応策を協議。同16日に首相官邸を訪れ、加藤勝信官房長官に善処を申し入れた。

 総会後、大川理事長は報道陣の取材に「社のトップが謝罪したことで、われわれはそれ以上争うつもりはない。アイヌ民族の歴史的な背景を踏まえて正しく放送されるよう協力していきたい」と話した。

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