白老町で今夏から「白老文化芸術共創・ROOTS(ルーツ)&ARTS(アーツ)SHIRAOI」と題した文化芸術プロジェクトが展開される。地元の実行委員会と文化庁などが主催し、日本の美や文化を世界に発信する国家的事業「日本博」の一環。アーティストが地域の文化資源に触れながら生み出した作品の展覧会など3本を企画した。住民と協働したアート活動を通じて白老の魅力を国内外にアピールし、地域の活性化や観光振興につなげる。
主催者は、地元の各団体代表者らでつくる白老文化観光推進実行委員会(会長・熊谷威二白老町商工会長)と文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会。実行委が今年春に国へ申請した企画は、文化庁の2021年度日本博プロジェクトに採択され、約1800万円の予算で実施される。
事業は▽アーティスト・イン・レジデンス▽シルキオ・プロジェクト▽音声コンテンツ(地域発ラジオ番組)―の3本。アーティスト・イン・レジデンスは、現代アート作家が町内に一定期間滞在し、住民と関わりながら土地柄を意識した作品を制作。空き店舗やスペースなどを活用し展覧会を開く。
シルキオ・プロジェクトは、イラストレーターや詩人ら複数のアーティストが白老に根付くさまざまな文化や歴史、人の営み、地勢をモチーフに独自の発想と想像力で作品化。体験イベントのワークショップも取り入れて各所で展示する。いずれのプロジェクトも作品展示などの期間は8月下旬から10月上旬を予定する。
音声コンテンツは白老発のインターネットラジオ番組を立ち上げ、地域の魅力をPRするプロジェクト。ネットの音声アプリを使い、町の観光情報や地域の話題、住民などを紹介する。週に1回程度の「週刊ラジオ」とスペシャル版の2本立てで企画し、地域住民の参画で番組を放送。7月から始める予定だ。他団体が秋に町内で開く飛生芸術祭やウイマム文化芸術プロジェクトなどとの連携も図る。
プロジェクトはアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)を構え、多文化共生を掲げる白老をインターネット配信も駆使して国内外へ発信し、地域の活力創出につなげることを狙いとしている。文化芸術と観光を組み合わせた周遊型のアートツーリズムを推進するための仕掛けでもある。
実行委は戸田安彦町長を名誉会長とし、顧問や正副会長、理事の役員に町議会議長や白老アイヌ協会理事長、町商工会、観光協会、建設協会、町内会連合会、文化団体連絡協議会の各会長、青年会議所理事長などが名を連ね、まちぐるみの体制を整えた。
22日に苫小牧市政記者クラブで事業説明に当たったプロジェクトのディレクター木野哲也さん(43)は「文化芸術、観光、まちづくりの3要素を意識した事業の展開で白老の活性化を目指したい」と話した。
▼「日本博」とは
東京五輪・パラリンピックを契機に、縄文時代から現代まで続く日本の美や文化を国内外に発信する文化庁主体のプロジェクト。「美術・文化財」「舞台芸術」「共生社会・多文化共生」など8分野のテーマに基づく事業の採択を受けた文化団体、自治体などが美術展、舞台公演、芸術祭などのプログラムを企画し運営する。2021年度は日本博の「主催・共催型プロジェクト」に白老町の実行委員会を含めて44団体の事業が採択された。

















