時間的転嫁

時間的転嫁

 東京五輪開幕まで、1カ月を切った。新型コロナウイルスの収束が見通せない中、感染対策に当たる専門家有志は「無観客が望ましい」と提言したが、大会組織委員会などは会場の収容定員50%以内、1万人を上限とすることを原則に観客を入れる方針を決めた。開催自体に反対する世論にも「あり得ない」と言わんばかりにアクセルを踏み続ける。

 コロナは発症までに潜伏期間が存在する上、検査、診断の時間もあって感染が確認されるまでにタイムラグが生じるところが厄介だ。無症状者の把握も難しい。東大大学院の研究チームは五輪観戦者が会場からの帰宅時、飲食店に立ち寄るなどした場合、都内の新規感染者が1日最大で約120人増えると試算。経済活動や人流が昨年2月の水準に戻っていく仮定でインド型変異株の割合は8月末に6割となり、ピークの10月中旬には1200人を超えるという。

 あくまで試算だが、そうした方向性が見えていながら有観客へと突き進むのは問題解決の先送り、時間的転嫁だ。緊急事態宣言解除による緩みで感染の第5波到来が懸念される中、再拡大をどう食い止めるのか。

 開催都市東京の小池百合子知事が過労による静養のため公務を離れたが、菅義偉首相の表情にもどこか健康上の危うさを感じ、嫌な予感が当たらないことを願っている。パンデミック下、トップ2人のコンディションにも不安を残し、開幕が迫る。(輝)

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