開催国

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 7月に入った。東京五輪の開会式に先立ち、21日には札幌ドームで女子サッカー競技が始まる。その札幌市は2日前、新型コロナウイルスのインド由来のデルタ株に感染した疑いのある陽性者が確認されたと発表した。京都大学の西浦博教授らの分析によると、デルタ株の感染力は従来のウイルスの1・95倍と推定され、五輪開幕の23日には国内の7割近くを占めると予測されるという。

 緊急事態宣言が解除され、人出が増えた。感染者も当然増える。緊急事態宣言の再発令を覚悟しなければならない。それでも、いざ始まってしまえば、開催に否定的だった人も熱狂する、と政府は高をくくっている。そして、五輪後の衆院選を有利に運べると計算している。

 五輪代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権で男子200メートルの小池祐貴選手が優勝した。「いいもんですね、勝つって」と、道内出身選手が笑みをこぼすのを見て、早くも胸が熱くなった。代表決定でこれだから、本番になったらどれほど感激するか。政権の思うつぼだ。

 だが「ピークに持っていくための状況が、日本以外の選手は制約を求められ過ぎではないか」と放送タレントの松尾貴史さんが全国紙に書いていた。桁違いに開催国に有利な状態で「メダルラッシュだ、すごいニッポン!」と言えるのか、と。感染の再拡大、不公平な条件で戦う選手たち、歓声さえ上げられない観客―。あと20日で心の整理を付けられそうにない。(吉)

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