野村呉服店 来月で90周年「まちの発展見守る」 地域密着、決意新たに

創業当時の野村呉服店

 苫小牧市表町の野村呉服店は9月、創業90周年を迎える。まちの発展と共に歩んできた市内最古の呉服店。3代目の野村信一社長(66)は「先代から受け継いだ基本姿勢『物を売るにも心を込める』を胸に、1人1人大切に接客することを心掛けてきた」と強調する。地域密着の事業継続へ、決意を新たにしている。

 同店は、滋賀県彦根市から南樺太(現ロシア・サハリン)に渡り、雑貨店を営んでいた野村社長の祖父、豊松さんが北海道に引き揚げて1931年、苫小牧でリヤカーを引いて反物や和装小物を販売したのが始まり。同年9月、錦町のすずらん通り沿いに店舗を構えた。69年に1条通り沿いに移ったがその後、苫小牧駅前通りの人通り急増を受けて89年、現在の場所に移転した。

 店舗の老朽化や市内東部地域の人口増加を踏まえ、3度目の引っ越しも考えたが、野村社長は「市内中心部でまちの移り変わりを見守りながら地域と共に発展してきた」と強調。「生まれ育った地域に愛着があるし、足を運んでくれる常連も多い」と、現地建て替えを決意。2015年11月、新装開店した。

 野村社長が先代の父、信雄さんの後継者として3代目に就任したのは1989年。大学卒業後、京都府内の呉服店で3年ほど修行を積み、家業を継いだ。

 しかし近年、着物需要は低迷気味で、1980年代からはレンタル化の流れが加速。業界が一丸となって着物の魅力を発信していこうと、野村社長が82年に有志と立ち上げた苫小牧呉服商組合も当時は20店ほど名を連ねていたのが3店まで減った。

 「かつて着物は人生の通過儀礼に不可欠で『実用性ある物』だったが、『趣味性』が強まっている」と野村社長。価値観の変化を考慮しながら、時代に合った呉服店の在り方を模索する。市民が着物を身に着ける機会を増やすため、「店内を着物姿で気軽に集えるサロン化することも視野に入れている」と言う。

 90周年を祝おう―と9月に華道家の假屋崎省吾氏を迎えたイベント、11月には着物を楽しむパーティーを計画。野村社長は「新型コロナウイルスの感染状況を見ながらの開催となるが、多くの市民に喜んでもらいたい」と話す。

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