論争

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 「明かりははっきりと見え始めている―」。25日夜の記者会見で菅義偉首相が、珍しく情緒的な表現も使って新型コロナウイルス対策の到達点や見通しを説明した。

 下を向いて原稿を読み続けることの多い菅首相。コロナ対策でも「発信力がない」と批判される。外出や外食を控える、飲食店の営業時間短縮など国民や特定の業界に理解と協力を求める事柄が多いのに「首相の言葉では伝わらない」との批判。内閣支持率は下がり続け、国会議員の補欠選挙や大都市の首長選挙では自民党の敗北が続く。

 「明かり」の根拠を問われ、一つとして示したのはワクチンの投与。「65歳以上のワクチン接種が順調に進み高齢者の感染拡大や重症化を防いでいる」と強調した。しかし25日の朝刊には「集団免疫 各国で絶望視」「7割接種でも感染拡大」の記事。残念ながら変異株「デルタ株」は、感染症対策の常識を変えつつあるのかもしれない。

 自民党総裁選挙日程が9月17日告示、29日投票と決まった。さっそく出馬への名乗りを上げたのは岸田文雄党前政調会長。菅さんの「自助・共助・公助」には「助け合う社会」を打ち出し、コロナ対策では「政治生命を懸け新しい選択肢を示す」。政権政党の総裁選び。部外者ながら、論争には期待したい。

 人はなそうとしてなし得なかったことによって評価され、言おうとして言い得なかった言葉によって忘れ去られる―。そんな言葉をふと思い出した。(水)

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