苫小牧市南地域包括支援センター(新富町)は今年度、駐車場の一角で地域住民と農園活動に取り組んでいる。自分で作った野菜を子どもたちに食べさせたいという認知症男性への個別支援策として始まった試みで、市民ボランティアも参加。生き生きと畑作業に精を出す男性の姿に、同センターの担当者は「認知症になっても暮らし続けられる地域づくりのヒントをもらっている」と話す。9月は認知症への理解を広げる「世界アルツハイマー月間」。
男性は77歳。同センターの管轄エリアで妻と2人で暮らしてきた。認知症を患い、妻とのトラブルが増えた一方、周りの支えがあれば自宅で暮らし続けることが可能な健康状態のため、同センターでは地域でできる支援を模索。「野菜を作って子どもたちに食べさせたい」という男性がふと漏らした一言から、農園活動を軸とした支援が計画されたという。
初の試みで手探りながらも6月、畑作りをスタート。駐車場として長年使ってきた土地のため土が固まり、石やがれきがたくさん埋まっている状態だったが、男性は連日、自宅から自転車で通い、同センターの職員と一緒に土を掘り起こす作業に打ち込み、長さ約3・6メートル、幅約2・8メートルの畑が完成。トマトやシソを植えて育ててきた。
同センターは、男性への個別支援と同時に、市民が認知症への理解を深める場に―と農園を「認知症フレンドリーファーム」と命名。「認知症みまもりたい」や「介護予防いきいきポイント事業」など市民の奉仕活動を後押しする市の事業とも連動し、これら事業登録者にボランティアとして農園活動に協力してもらってきた。地域の高校に協力を呼び掛け、生徒に看板制作を手伝ってもらう計画も進めている。
男性が手塩にかけた作物はぐんぐんと成長。8月には近くの保育園児を招待し、収獲体験を行った。「子どもに野菜を食べさせたい」という願いがかない、男性は「子どもたちの笑顔が見られて本当にうれしい」と相好を崩した。
収獲の最盛期を終えた今も意欲は衰えず、畑を拡張中。ブロックで長さ約7メートル分の枠を作り、枠の中の土を掘り起こす作業を進めている。「来年もおいしい野菜を食べさせてあげたい。春には子どもたちと一緒にイモも植えたい」と展望を語った。
一方、男性は自分の体調管理やスケジュール管理が難しいことから、疲労による体調不良などを防ぐため、当初の想定以上にきめ細かな見守りが必要と分かった。農園活動ができない冬期間の支援をどうするかも課題で、関係機関と知恵を絞る。
同センター管理者で市認知症地域支援推進員を務める桃井直樹さんは「認知症になっても安心して暮らし続けられる地域をつくるためには、本人の声に寄り添った個別支援が重要」と指摘。「これからもさまざまな機関や市民と連携し、個別支援の在り方を探っていきたい」と述べた。
















