北海道大学のキャンパス内を歩くと、木々が色づき始めている。木の葉が舞い散る音を添わせながら吹く秋の風を、秋音(しゅうせい)と呼ぶのだそうだ。道都・札幌も間もなく紅葉が見頃を迎える。
そんな季節。岸田文雄・自民党総裁が4日、第100代首相に就任した。よもやの菅義偉前首相の自爆のような退陣表明から1カ月。現在の岸田派である「宏池会」出身の首相の誕生は宮沢喜一政権以来30年ぶり。新首相が公開討論会や記者会見で再三訴えたのは「丁寧で寛容な政治」。宏池会の創設者・池田勇人元首相が使った「寛容と忍耐」を意識したと思われる。
党内では伝統的に「抑制的に行動するお公家集団」といった評価が定着する宏池会。だが、新首相が最初に打った一手は、衆院選の前倒し。14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票と、当初の見込みより1週間早い。解散から投開票まで17日間というのは、戦後最短という。「ハネムーン期間」に選挙を終えたいという思惑も透ける。
新首相が繰り出した奇襲に、道内各党幹部からどよめきも起きた。与党の自民党自身も一部に候補者調整が残されているほか、6小選挙区で競合する立憲民主党と共産党の野党共闘による候補一本化へ向けた協議も途上だ。公示まで2週間を切り、タイムリミットが迫るぎりぎりの調整が続く。4年前の前回も旧民進党の分裂で公示直前まで揺れた衆院選。政権選択選挙のゴングが間もなく鳴る。(広)









