8日に岸田文雄新首相が所信を表明した。きょうから代表質問が交わされ、14日には衆院は解散。その5日後には総選挙が始まる。慌ただしく10月を駆け抜けて”政治決戦”が繰り広げられる。
「自民党は変わる」と言いながら、その覚悟が判然としないままに新内閣ができた。報道各社の世論調査の支持率にはご祝儀感はみられない。菅政権を含めて国民は政治に裏切られ続けてきた。岸田首相にも長老の影響力が見える。だが総裁選で政治の現状を「民主主義の危機」と言ったのは岸田氏だ。危機感の認識は当然だし、共感する。
注視するのは、その「民主主義そのものが危機にある」との認識に基づく政治姿勢と「新しい資本主義」の実現。新しい資本主義については、成長戦略と分配戦略で成長と分配を好循環させると所信表明で演説した。首相が言う「富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ」のはアベノミクスを含む新自由主義の必然。拡大した格差の是正は喫緊だ。まずは偏った富の分配に注力を望む。
一方「民主主義の危機」の言葉は演説にはなかった。危機の正体は安倍、菅政権の負の遺産と同根。違憲の指摘がある中で集団的自衛権の憲法解釈を閣議で変更し安保法の成立を強行したこと、「森友」「桜」、参院選の大規模買収事件に学術会議の任命拒否。首相が言う「信頼と共感の政治」にはこれらの検証も不可欠だ。初心に沿う覚悟の指揮をお願いしたい。(司)









