6年前に亡くなった作詞家、岡本おさみさんが残した作品に「祭りのあと」がある。シンガー・ソングライターの吉田拓郎さんが作曲し、歌った。こんな詞だ。〈日々を慰安が吹き荒れて 帰ってゆける場所がない…〉、〈もう笑おう もう笑ってしまおう 昨日の夢は冗談だったんだと…〉。岡本さんが母を、拓郎さんが父を亡くし「お互い、つらいな」という時期に誕生した歌という。半世紀ほど前の作品だが、今でも名曲ではないか、と思う。
政治の世界も、祭りが終わった。出馬した4候補を操る重鎮たちの激しい権力闘争となった9月の自民党総裁選から、10月末投開票の衆院選まで、取材現場は嵐のような2カ月だった。
取材を通して感じたのは、自民党という政党のしたたかさ。世論の逆風をかわすため党内で別の政権の旗をつくる。「疑似政権交代」と呼ぶのだそうだ。今回も昭和以来続くその手法を使い、低迷していた支持率を回復。衆院選で党単独での「絶対安定多数」確保へとつなげた。
激戦区が多かった道内には、党首・幹部らが次々に来道。大票田・札幌の街頭で「空中戦」を活発化させた。全国的に躍進した日本維新の会の松井一郎代表の「選挙は積極的支援でなくてもいい。消極的支援でも選択を…」との言葉が心に残った。
晩秋の祭りが終わったばかりだが、気が付けば来夏の参院選まで8カ月しかない。惨敗した立憲民主党も代表が交代予定。再び与野党の攻防が続く。(広)









