認諾

認諾

 森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自殺した財務省近畿財務局の職員の妻が国と当時の理財局長に損害賠償を求めていた訴訟のうち、請求の棄却を主張していた国が先週、一転して原告の要求を受け入れる「認諾」を行い、1億700万円の賠償金を支払うことで裁判を終結させた。改ざんの経緯をまとめた職員のメモの一部が開示され、さらなる事実の解明に向けて文書開示を求めていた過程での、裁判のいわば強制終了。核心に近づく事実の積み上げは断たれた格好だ。国が表に出さない事実は何か。安倍政権下の国会質疑や報道では学園と安倍夫妻の関係、私的な文書、関与した官邸職員の名前が浮上し、公文書が廃棄、改ざんされたことなども明らかになりながら、結局は学園経営者の詐欺事件で止まった。

 職員は、国有地を周辺の10分の1という安い価格で取引した経緯と文書の改ざんに行政をゆがめる問題意識、疑義を抱き、自らメモを残した。ねじ曲げられた行政に関わった悔恨の果てに自らの生を絶った。「認諾によって夫はまた殺された」。財務省に抗議した妻の悔しさと怒りは測り得ない。

 生命をないがしろにして平気な者がこの国でも政治と行政の中枢にいる。強者への忖度(そんたく)、虚偽答弁、私物化…、行政にあってはならないことがまかり通る。「民主主義の危機」と言った岸田文雄首相は何を思い、するのか。来年は参院選。行方を見定める。(司)

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