今年も一年、たくさんの本を読んだが、さまざまな場面における体が疲れない裏技をまとめたメディカルトレーナー夏嶋隆さんの「疲れないカラダ大図鑑」は勉強になった。人体解剖学や動作解析学、日本の伝統的所作を踏まえた理論が紹介されている。

　ビジネスシーンでの疲れない立ち方・座り方や自転車で坂道をスイスイ上がる方法など、図解入りでどれも実践的。「重い荷物は体の後ろで持て」をはじめ目からうろこの話が多い。「１０時間立ち続けても疲れない方法」を伝える項目もあるが、できればそんな場面は回避したいものだ。

　いずれも日本人の骨格や筋肉の構造に合ったスムーズな動作を手に入れる方法といい「疲れない体を手に入れれば、仕事や生活のパフォーマンスがアップするのみならず心まで晴れやかになり人生の幸福度も上がる」と説く。逆に言えば構造を無視した動きは、あちこちに疲弊をもたらすということか。いろんな分野に通じる話だ。

　夏嶋さんによると、疲れによる経済損失は年間１・２兆円。「疲れを解消しない限り、道は拓（ひら）けない」。しかし無理をしたくなくても、しなければならない時がある。持久戦になりそうなら少しでも疲れないやり方を考え、乗り切るしかない。デスクワークもリモートワークも、外回りも家事も。コロナ禍がなお暗い影を落とす世の中、自分に合った方法で心と体の健康をキープしたい。（輝）