一つの箴言(しんげん)が人の運命を変えることがある。敬愛する作家の一人、故城山三郎さんは学生時代の終わりから大学教師になって間もなくの頃、読んだ本の中で、それに出合った。「静かに行く者は 健やかに行く 健やかに行く者は 遠くまで行く」―。城山さんの最も好きな言葉で、ゆがんだ学者世界から離れ、文学へと傾倒し、悔いのない人生を送ることができたという。
新たな変異株「オミクロン株」の警戒で、年末年始は実家に帰省せずに札幌で過ごした。初詣へ向かう人波の中で、なぜか城山さんの言葉を思い浮かべた。「遠くまで行く」という意味を考え、「健やかに行く」という一年でありたいと願った。
担当する道庁も、昨日から2022年の業務が動きだした。鈴木直道知事はその初日に緊急記者会見を開き、道内でオミクロン株感染が初確認されたと発表した。間もなく2年を迎えるコロナとの長い闘いが続く。
38歳の若さで初当選した全国最年少知事も3月で41歳。4月からは1期目の仕上げの年度に入る。番記者として感じるのは高橋前道政は「安定感」、鈴木道政は風も重視し軌道修正を図る「しなやか」な政治に映る。同じ保守道政だが、微妙に異なる。むしろリベラルに近い側面も持つ。本紙インタビューで選んだ今年の漢字は一昨年が「感」、昨年は「変」。寅(とら)年の年末に、どんな1字を刻むか。その先に統一地方選の天王山、知事選が控えている。(広)









