NPO法人ストランディングネットワーク北海道(SNH、函館市)は3月、道内に漂着した鯨類(クジラやイルカなど)の情報をまとめた会誌「humpe yan(フンペ・ヤン)」を創刊した。苫小牧市や白老町での漂着事例も多数掲載されており、鯨類研究の権威で、北大教授の松石隆理事長は市民に「漂着情報があればネットワークに一報を」と協力を呼び掛ける。
海洋生態系の最高次の捕食者とされ、捕獲が世界的に厳しく制限されている鯨類は未解明な部分が多く「取り組むべき課題が山積している」(松石理事長)。生態の詳細把握には漂着した個体を調査したり、標本を採取、分析したりすることが解明の重要な手掛かりとなるという。
「humpe yan」は、先住民族であるアイヌ語で「クジラが来たぞ」という意味。2020~21年に道内に漂着した計205頭の情報を写真付きで紹介している。発見日や場所、体長、収集した標本の部位などの情報を網羅。苫小牧市13頭、白老町4頭、むかわ町1頭の漂着情報も載っている。
同市からは昨年、全体の12%に当たる情報が寄せられ、SNHは「苫小牧への鯨類漂着は特筆に値するほど多い」と指摘。「本誌を通じて(市民にも)北海道の鯨類について深く広い関心を持ってもらい、研究者は情報源として活用してほしい」と話す。
A4判92ページ。320部作成し、道内沿岸部の自治体や漁協、博物館、標本提供者などへ無償配布した。
SNHは07年、道内の鯨類研究者らの任意団体として発足し、21年からはNPO法人として活動。07年から21年末までに年間平均66件、計1106個体の鯨類の漂着情報が寄せられたという。
情報提供を基に、19年8月にはオホーツク海を中心に生息するクロツチクジラが新種として発表された。近年、漂着した鯨類の胃の中からプラスチックなどの海洋ごみが見つかるケースが相次いでおり、海洋汚染の現状把握が喫緊の課題となっている。
松石理事長は「(鯨類の生態への理解が)生物多様性維持のための希少種保護や人間と海洋生態系の共存模索の鍵になる」と強調。「北海道で鯨類生態の解明に貢献することは、学術研究のみならず社会的にも地球規模の意義がある」と説く。
情報提供や会誌に関する問い合わせは北海道いるか・くじら110番 携帯電話090(1380)2336、通報用メールはkujira110@gmail.com



















