想像してしまった。ある日突然、ロシア軍が北海道に侵攻し、戦車やミサイルで街を破壊する光景を。ウクライナと同じような凄惨な事態がこの島で起きるはずがない。そう願いたいけれど、ニュースで取り上げられたロシアの政党党首の発言がとても気になる。
「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」。党首は党のサイトで堂々と表明した。西洋諸国の対ロ制裁に歩調を合わす日本への反感か。脅し文句にあおられる必要はないが、領土的野心も見え隠れするこうした考えがロシア国内で広がりを見せるようであれば看過できなくなる。
ロシアの侵攻は、日本にとって無縁な話ではない。太平洋戦争末期、旧ソ連軍は日ソ中立条約を一方的に破棄して対日参戦し、千島列島や北方領土などを占領した。北海道の半分を手中に収めるもくろみもあったとされる。そうした大戦中の侵略思想を持ち出し、戦勝者の権利は今もあると言わんばかりの党首の物言いは不気味だ。北方領土で軍事演習を行ったり、近海で軍艦を航行させたりと、不穏な動きを活発化させている。平和条約協議の中断やビザなし交流の停止も日本へ通告した。11日に始まったサケ・マス漁業交渉の行方も不透明だ。
制裁への報復はどこまで強まるのか。だが、罪のない多数の民間人を武力で殺害する非情な行為を認めることなどできるはずがない。プーチン政権よ、いいかげんに目を覚ませ。(下)









