運航会社 際立つずさんさ 安全管理不備次々に 知床観光船事故1週間

運航会社 際立つずさんさ 安全管理不備次々に 知床観光船事故1週間
記者会見する観光船運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長=27日、斜里町

 知床半島沖で発生した観光船「KAZU 1(カズワン)」の遭難事故から、30日で1週間。運航会社「知床遊覧船」(オホーツク管内斜里町)をめぐっては、事務所に設置されていた無線のアンテナが折れていたほか、船に衛星電話を積んでいなかったとみられるなど、ずさんな安全管理の実態が次々と明らかになっている。

 27日に記者会見した桂田精一社長は、無線アンテナが折れていることに気付いたのは事故当日の朝で、すぐ業者に修理を依頼したと説明した。ただ同社関係者は、それ以前からアンテナ破損に気付いていたとし、「冬の間に雪などにより折れたのでは」と指摘する。

 桂田社長は会見で「携帯電話や他の運航会社の無線でやりとりができるので、出航を停止する判断はしなかった」と釈明した。実際にカズワンから「浸水している」と無線連絡を受け、海上保安庁に救助要請をしたのも同業他社だった。

 衛星電話については、昨年から調子が悪いと認識していたが、故障を知ったのは事故後だったと説明。「(カズワンに)積んでいたと認識していたが、実際には積んでいなかったと聞いている」と曖昧な回答に終始した。事故2日前に網走海上保安署が行った安全点検では、自船の位置を知らせる全地球測位システム(GPS)装置が搭載されていなかったことも明らかになった。

 事故当日は波浪注意報や強風注意報が出ており、桂田社長も「把握していた」という。しかし午前8時に船長と打ち合わせした時点では港周辺の波風は強くなかったとして、海が荒れたら引き返す「条件付き運航」で出航を決定していた。

 カズワンは昨年2回事故を起こし、うち1回は今回と同じ船長だった。会見で桂田社長は「結果的に安全管理は行き届いていなかった」と認めた。

 海上保安庁は、業務上過失致死などの容疑で捜査。同社側に安全管理上の過失があったかを判断するには、事故原因の特定が不可欠で、29日に発見された船体の引き揚げ後、捜査を本格化させるとみられる。

教え子 帰らぬ人に 当時指導の教授ら悼む
 観光船遭難事故で亡くなった千葉県松戸市の橳島優さん(34)は旅行や鉄道が好きで、母校の筑波大では鉄道の安全性について研究していた。当時の指導教授らが29日までに取材に応じ、「信じられない思い。もっとやりたいことがあっただろうに、残念でならない」と語った。

 海外で生活していて英語が堪能だったという橳島さんは、2006年8月に筑波大へ入学。4年時に地盤工学研究室に配属され、地盤工学会関東支部の大会で賞を取ったこともあった。直接指導していた松島亘志教授は「なかなかできないこと。とても頑張って真面目に研究していた」と振り返る。

 卒業旅行後の研究室のパーティーで、フィリピンで小型飛行機の免許を取ってきたと聞かされたのが特に記憶に残っているという。松島教授は「本当にバイタリティーがある学生で、社会人になっても活躍してくれるんだろうなと思った」と惜しんだ。

夫婦犠牲にぼうぜん 兵庫の知人「まだ信じられない」

 知床半島沖で観光船「KAZU 1(カズワン)」が遭難した事故で、兵庫県小野市の竹川好信さん(66)と妻の生子さん(62)の死亡が新たに確認された。好信さんが25年通った理容店の店主、西山武志さん(52)が29日、取材に応じ、「まさか事故に巻き込まれているとは。いまだに信じられない」とぼうぜんとした様子で語った。

 西山さんによると、好信さんは地元の素材メーカーを定年まで勤めた後、長男が始めた養蜂農家を手伝っていた。理容店を訪れた際は、生き生きと養蜂の仕事について語り、話が盛り上がった。西山さんは「養蜂歴は長くないが、一番仕事が面白くなってきたところだと思う」と残念がった。

 散髪中、仕事の愚痴などは一切言わず、若い理容師とも分け隔てなく接してくれた。「優しさがにじみ出るような人だった」と振り返る。明るい印象の生子さんとの仲も円満で、「絵に描いたような夫婦だった」と語り、突然の悲報に表情を曇らせた。

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