月内に船内捜索開始 知床観光船事故 「飽和潜水」作業台船現場へ 国交省は検討委で「安全」議論

 知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した事故で、特殊な設備で深い海に潜水士を送り込む「飽和潜水」の資機材を載せた作業台船などが10日、北九州市の門司港を出港した。月内にも現場に到着し、船内の捜索に着手する見通し。

 出港したのは民間の専門業者「日本サルヴェージ」の多目的作業台船「海進」(全長約70メートル、2973トン)など。海上保安庁が船内捜索などで同社と契約を結んでおり、飽和潜水は海進を母船として実施される。

 第1管区海上保安本部(小樽市)によると、飽和潜水を担当する潜水士は4人を予定。事前に特殊なガスで満たされた加圧室に入り、高い水圧に体を適応させる。海進は作業に必要な資機材を載せているが、自力で航行できないため、救助船「早潮丸」がえい航する。

 現場海域周辺の網走港(網走市)到着まで1週間程度かかる見込み。潜水士は船内の様子を確認するほか、引き揚げに向けた船体調査も行う。

 同保安本部などは11日も航空機と船艇で、行方不明者12人の捜索を続ける。現場海域では民間作業船「新日丸」の無人潜水機による調査も継続したが10日時点で、行方不明者の手掛かりは得られなかった。

 一方、国土交通省は11日午後、安全対策などを議論する検討委員会の初会合を開く。有識者らで構成し、事業参入時のチェック強化や海上運送法上の安全管理規定の実効性確保などがテーマとなる。夏までに中間とりまとめが行われる予定。

 事故は先月23日に発生し、これまでに14人の死亡を確認。同本部は業務上過失致死の疑いで運航会社「知床遊覧船」の関係先を家宅捜索したほか、同社の桂田精一社長(58)から任意で事情聴取するなど、安全管理体制に問題がなかったか調べている。

「知床遊覧船」 連絡にアマ無線使用 業務用では認められず 
 観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故で、運航会社「知床遊覧船」が業務での使用が認められていないアマチュア無線を事務所と観光船との連絡手段に用いていたことが10日、国土交通省関係者への取材で分かった。同省は昨年、改善を指導していたという。

 同省関係者によると、同社が海上運送法に基づき国に届け出た「安全管理規定」では、観光船との連絡手段として衛星電話、携帯電話、業務用無線の三つを定めていた。しかし、実際に使われていたのは業務用無線ではなく、アマチュア無線だった。

 電波法は、緊急時以外に業務でアマチュア無線を使用することを禁じている。カズワンが座礁など2件の事故を起こしたとして昨年6月に実施された特別監査で、同省はこの点について指導したが、改善されなかったとみられる。

 「思い届くよう」花束手入れ 斜里町、献花台を公開

 同社と観光船の通信手段をめぐっては、事故3日前の船舶検査で、衛星電話から携帯電話に変更していたことが判明。しかし、携帯電話は運航ルートの大半が通信エリア外だった。残る無線もアンテナが壊れており、事故当時は使用できなかったとみられる。
知床半島沖の観光船沈没事故を受け、オホーツク管内斜里町内の体育館に設けられた献花台が10日、報道陣に公開された。これまでに全国から集まった花束は585束に上る。「思いが届くように」と願い、町職員らは花の状態を保つための手入れを続けている。

 体育館は犠牲者の遺体安置のため使われていた。献花台は当初、屋外に設置されたが、犠牲者14人の遺体が家族に引き渡されたため、2日に室内へ移された。今でも大勢が訪れ、メッセージを添えるなどした花を供えている。体育館入り口には、「皆さんが一日でも早く大切な人の元へ帰れますように」などと記されたカードが張られていた。

 北雅裕副町長は体育館前で取材に応じ、「遠い所では沖縄などから献花に訪れる人もいる。全国から寄せられた気持ちに対し、職員も率先して手入れに励んでいる」と話した。

 花の手入れをしている町職員の茂木千歳さん(56)は、「献花には亡くなった方への哀悼の思いや、不明者が家族の元へ戻れるようにという思いが込められている。少しでも長くきれいに、思いが届くようにしたい」と語った。

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