「イマジン」

「イマジン」

 自宅の引っ越しで荷造りをしていたとき、古いレコードが出てきた。ジョン・レノンの「イマジン」。買ったのは中学生の頃だったか。今も色あせない名曲だ。

 イマジンが世に出たのは1971年。冷戦期の米ソが介入し、泥沼化したベトナム戦争が続いていた時代だ。〈想像してごらん、全ての人々が平和に暮らしていることを―〉。反戦平和の代表曲として、発売から半世紀を経てなお歌い継がれる。昨夏の東京五輪や今冬の北京冬季五輪の開会式でこの曲が流れた。それ以前の平昌やロンドンの五輪でも。〈何かのために人を殺したり、死んだりしない―〉。シンプルな歌詞とメロディーながら、世界の人たちが集まる平和の祭典にふさわしい作品とみなされているのだろう。

 殺され、拷問され、強姦(ごうかん)され―。ウクライナ国民が凄惨な目に遭っている今こそ、必要な楽曲ではないか。ミュージシャンのジュリアン・レノンが4月、かたくなまでに歌わなかった亡父のイマジンを初めて演奏し、ユーチューブで配信した。「これを歌うのは世界の終わりを感じた時だけ」。核の使用もちらつかせる大国の非道によほど衝撃と危機感を抱いたのか。ウクライナ難民支援のため、シングルも発売するという。

 イマジンに込められたメッセージは、民族や国を超えて人びとの心を揺さぶる。〈想像してごらん―〉。世界の隅々に響きわたり、平和希求の思いでつながればと願う。(下)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る