苫小牧市高丘の北大苫小牧研究林内で冬季、スズメバチの巣が、クモなど他の生物の越冬に利用されている可能性が高いことが分かった。北大大学院博士後期課程2年の古澤千春さん(26)と同研究林学術研究員の岡宮久規さん(30)が調査結果をまとめた論文が、海外の学術誌「エコスフィア」(5月12日発行)に掲載。2人は「危険なイメージがあるスズメバチだが、森林の豊かな生物群集を支える大切な存在であることを知ってもらえれば」と話す。
木の枝や家の屋根下に大きく精巧な巣を樹皮などで作るが、冬季に放棄するスズメバチの性質に注目。「家主」がいなくなった巣は他生物にとって魅力的な越冬場所になる―と仮説を立て、昨年1月、調査に着手した。
2020年夏、調査対象とする巣に目星を付け、雪の重さなどで壊れたものを除き、21年2月までに6個を確保。1~2月に楕円(だえん)形の巣(長径43~18センチ)の中に、生きた節足動物がいないかを1個ずつ分解して調べた。その結果、計96匹の節足動物を確認。クモが85・4%を占め、残りはハエやガ、カゲロウなどの昆虫で、2人とも「予想以上の多さだった」と驚く。
クモと一緒にハエやガが同じ巣の中にいたケースもあり、岡宮さんは「(ハエやガは)クモの餌なので通常はあり得ないこと。内部構造が複雑で、マンションみたいに共同生活していた」と説明する。
厳冬期の調査ながら、巣の中で確認できた生物のほとんどが生存。スズメバチの巣の保温機能を示唆する他の研究者の調査結果も踏まえると、「巣には一定の越冬機能がある」と結論付けた。
このほか、論文では地球温暖化で積雪量が減少していけば、巣が残りやすくなり、生態学的な機能も高まるとの予測を提示。昨年11月にアメリカ生態学会に投稿し、査読後、5月の学会誌に掲載された。
古澤さんは「何か面白い発表ができればと始めた調査だった。大変だったが、報われた」と笑顔。岡宮さんも「研究の発展性が認められた。ハチの巣を切り口にした新たな生態学研究が生まれれば」と期待を込めた。
論文は、北大苫小牧研究林公式ホームページでも紹介されている。



















