ロシアが北方領土周辺海域での日本漁船の安全操業に関する協定の履行停止を発表したことについて、松野博一官房長官は8日の記者会見で「遺憾」の意を表明し、漁期を迎える秋に向け、日本漁船が操業できるようロシアと協議する考えを示した。履行停止はウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁への対抗措置とみられ、日ロ関係は一段と冷え込みそうだ。
松野氏は会見で「一方的に協定の履行停止を発表したことは遺憾だ」と表明。「協定の下での操業が行われるよう、ロシア側と協議を行っていく」と説明した。政府関係者によると、既にこうした立場を伝えたという。
日ロ両政府は1998年に発効した同協定に基づき、北方領土周辺で日本漁船が拿捕(だほ)されることなく安全に操業できるよう、漁獲量など具体的な操業条件を毎年、交渉して定めている。
ロシア外務省は7日の声明で履行停止を発表。理由について「日本政府は協定が機能するために不可欠なサハリン州に対する無償の技術支援の提供に関する文書の署名を遅らせ、支払いを凍結する方針を取った」としている。
これに対し、松野氏は「ロシア側はサハリン州の協力事業を、協定実施の前提条件であるかのように両者を結び付け、それを理由に一方的に協定の履行停止を主張している」と反論した。
ウクライナを侵攻したロシアは日本や欧米などによる経済制裁に反発を強めている。3月には北方領土問題を含む日本との平和条約交渉の中断を表明していた。
協定停止に困惑広がる 問題の長期化でホッケ漁影響も
ロシアが北方領土周辺海域での安全操業協定の履行停止を発表したことを受け、水産関係者の間で困惑が広がっている。履行停止がロシアに対する経済制裁への対抗措置とみられるだけに、現場の漁師にとっては「見守るしかない」(北海道漁業関係者)状況。問題が長期化すれば、9月に漁期を迎えるホッケ漁にも影響が出そうだ。
「寝耳に水だった」。ロシアの措置に対し、政府関係者は当惑した様子で話す。ロシアが義務を履行していないと非難するサハリン州の協力事業への支払いについて、日本側は「安全操業協定とは別」と認識しているためだ。
北方領土周辺の該当水域内での操業をめぐり、日本は毎年ロシアと交渉を実施。2022年分については、漁獲枠がホッケやスケトウダラなど計2177トン、ロシア側に支払う協力金2130万円などの条件で妥結している。
ホッケ漁の漁期は9月から、スケトウダラも来年1月からのため、履行停止の影響も現時点では限定的とみられる。しかし、ホッケ漁の漁業者は「操業までに交渉がどう進んでいくか不安はある」と吐露する。
一方、今月3日にロシアと妥結した貝殻島周辺のコンブ漁は今回の措置の対象外で、水産団体や自治体などで構成する北海道水産会は「影響はない」(幹部)と話す。それでも、コンブ漁への出漁者が多い漁業組合からは「交渉は妥結したが(今月から予定している操業が)不安だ」との声が聞かれる。
実際、日ロ漁業交渉に詳しい北海学園大学の浜田武士教授は「支払いを放置したままでは、コンブ漁も、9月のホッケ漁も操業できないとのメッセージではないか」と指摘。その上で、出漁できない状況が続けば、漁業者だけでなく「加工業者など地域経済にも影響しかねない」との見方を示した。
















