「ゼッケン付けてもらえますか」。突然話し掛けられたのは卓球会場での話。スポーツ部配属当初から担当している競技で、写真撮影や取材はある程度できる。ただ背中のゼッケンを付ける作業は業務外。
前兆はあった。取材対象の試合開始を会場隅で待っていた際、横でひときわ気合の入ったシャドー練習をする男子選手がいた。次の瞬間「ガシャン」という衝撃音。勢い余って壁の出っ張りに背中を打ち付けたようだった。驚いて振り向いた小生と一瞬目が合った気はしていた。
有無を言わさずゼッケンを渡された。選手たちにとっては夢の全国舞台。見苦しい付け方はできない。幸いユニホームの背中に安全ピンを何度も付け外しした跡を発見。目印にして手の震えを抑えながら何とか完成。「ありがとうございます」。礼儀正しい鳥取県代表の少年だった。
こうなると彼の動向が気になって仕方がない。試合の序盤、何度か両肩を大きく回すしぐさ。もしや「いずい」のか。鋭いドライブやバックハンドのショットを随所に披露していたが、結果は予選落ち。手助けしたゼッケンが原因じゃなければいいのだが。
(北)

















