岸田内閣が発足したのは昨年の10月4日。ちょうど1年たつ。その内閣・与党は、7月の参院選後、重要な国政課題が山ほどあり、野党が憲法に基づいて国会の召集を要求したにもかかわらず、応じなかった。憲法をないがしろにする悪しき前例は安倍政権からだ。きょう開会の臨時国会がやっと本格的な議論の場になる。
情勢悪化一途のロシアのウクライナ侵攻は停戦の糸口さえ見えず、これに端を発したエネルギー・食糧問題で世界の経済、政治が揺れている。強大な武力を持つ中国は周辺国に脅威を与える言動を繰り返し、日中は緊張状態。内政も旧統一協会、国葬、東京五輪汚職、感染症に円安、相次ぐ豪雨や巨大台風に物価高騰。内外にこれだけ難題があれば国民だって気はめいる。
「黄金の3年」を手にしたはずの岸田首相は内閣支持率が急降下し、過去の短命政権の末期と様相が似てきたという。昨年の党総裁選で「民主主義の危機」の認識を示し、小さなメモ帳を掲げて「聞く力」をアピールしながら「政治の信頼回復」を訴えたのは誰か。首相がやるべきことは、この間の政治姿勢の軌道修正しかない。民意と民主主義の手続きにのっとった誠実な施政だ。「丁寧に説明」の言葉とは裏腹に、これまでのように論点をずらして国会の議論を形骸(けいがい)化する対応が続けば、民主主義は危機から脱することはない。臨時国会では、不信が募る私たちの心に届く誠実な議論を求めたい。(司)









