耳が不自由な人は電話応対が難しいなどの理由で就職先が限られ、苦労が多いという。さまざまな困難を乗り越え、7月から上川管内美瑛町で民泊の運営を始めた人がいる。
同町の小高い丘に自宅兼民泊「はるの空」をオープンした春日晴樹さん(40)と妻史恵さん(36)だ。7畳一部屋で1日1組、2人に限定。キッチン、シャワーなどを自由に使って自炊するスタイルで、部屋の窓からは大雪山がよく見える。ひのきの露天風呂が見晴らしがよく好評で、「日本人のほか、米国やフランスからもお客さんが来ます」と晴樹さん。
生まれつき聞こえない晴樹さんは、東京都内のろう学校を卒業後、介護福祉士の資格を取得して介護施設で働いた。
バイクでの日本縦断や世界一周旅行も体験。ロケットに憧れ、32歳の時に宇宙航空研究開発機構(JAXA)で広報担当として勤務し、耳が不自由な人を対象にした講演の企画などをした。「『国際宇宙ステーション』『宇宙船』など、さまざまな手話も考案しました。やりがいがありました」
一方、史恵さんは10歳の時、高熱が出て聴力を失った。晴樹さんとは介護福祉士として働いていた時に知り合った。「新婚旅行で初めてペルーに行きました。それまでは耳が聞こえないからと不安でしたが、世界の広さを知ることができました」と笑顔を浮かべる。
晴樹さんは35歳の時、結婚を機にJAXAを退職。史恵さんの地元の富山県に引っ越した年、長男空知君(4)が誕生した。子どもが伸び伸びと過ごせる環境を探し、美瑛町が実施していた移住体験に参加。「自然の豊かさに魅せられ」、2019年に引っ越した。
3年間は運送業などで働いて資金をため、今年3月、町の助成金も活用して「はるの空」を建てた。
民泊は現在、予約が数カ月先まで埋まる人気ぶり。コロナ下でマスクをする客が多いため、春日さん夫婦は唇を読んで会話することができず不便を感じることもあるが、「身ぶりや手ぶり、筆談で何とか対応しています」と言う。
6月には長女風花ちゃんが誕生。「ろう者は人と関わらない仕事を選んだり、挑戦を諦めたりする傾向があります。みんながやったことのない道を進むことで、誰かの背中を押し、踏み出す一歩になると信じています」と晴樹さんは力強く結んだ。
















