苫小牧市を「港まち」と答える市民がどれぐらいいるのだろう。NHKのテレビ番組「ブラタモリ」で港の成り立ちが紹介され、少しは全国区になったのだろうか。残念なのは全国有数の港なのに市民との距離はやや遠い。歴史をたどるとその距離が縮まるのかもしれない。
そんな苫小牧港の東港に新たな岸壁が造られる。単なる機能の増強に過ぎないと思われがちだが、30年前の東港を知る者にとって、このニュースは隔世の感がある。今でこそ東港はフェリー航路があり、国際コンテナの荷役で活況を呈する。国際港としての姿がある。
だが、30年前の東港は閑古鳥が鳴いていた。船舶の入港はほとんどなく「巨大な釣り堀」などとやゆされた。当時は、道内他港への配慮から、背後地の苫小牧東部地域の立地企業の原料や製品出荷の利用に制限されていたからだった。
そこに浮上した新たなフェリー航路計画。安全面の調整で西港乗り入れが難航していた行政が、東港の規制を打破するため繰り出したウルトラCが岸壁の「暫定利用」。結局、これが突破口となり、今のようにどんな貨物でも扱える流通港に成長した。そのフェリーの強化につながる岸壁の増設。時代の変化を実感せずにはいられない計画だ。(昭)









