4人の友情

4人の友情

 ビートルズ少年だった。リアルタイムで聴いた最後の世代だと思う。遠い昔。まだ中学時代の春。あの映画が苫小牧でなかなか上映されず、室蘭の映画館まで見に行った。20世紀を代表するロックバンドの解散直前のセッションを追った「レット・イット・ビー」。あの4人がもう一緒にやることはないんだなと思うと、ひどく悲しくなったことを思い出す。

 あの映画が元になった8時間に及ぶ超大作が「ゲット・バック」のタイトルでよみがえった。舞台は1969年1月の母国のロンドン。時間軸に沿ってジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人を丹念に追ったドキュメンタリーだ。

 4人が率直にアイデアを出し合って珠玉の名曲が次々に誕生していく。まだ20代の若者だが、研ぎ澄まされた感性に驚く。おとぎ話のような「真実」が真逆であることも分かる。4人は決して不仲ではなかった。映像が友情を語っている。

 ハイライトはビル屋上の伝説のコンサート。映画タイトルの彼らは何に戻りたかったのか。名声はいらない。故郷リバプール時代のシンプルなロックンロールバンドだったのかもしれない。4人のうち2人は先に天国に旅立った。最後の演奏から、半世紀以上の歳月が流れた。(広)

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