物忘れ

物忘れ

 春は花が咲き、世の中も入学、進級、転勤など活発な動きが生まれ、ものみな活気づく季節だ。うららかな陽気に誘われてうとうとする心地よさもこの時期の特徴なのかもしれない。梅と桜の前線が足早にデッドヒートを繰り広げ、桜開花の便りはそこまで来ているようだ。

 顔は知っていても名前が出てこない。固有名詞がとっさに出なくなり「あれ、あれ」などと言ってしまう。こうしたことは年を刻んでいくと、誰しもが経験する。あまりにも続くと「認知症」の始まりだろうかと疑ってしまう。

 そんな切ない気持ちを吹き飛ばしてくれる本に出合った。医師の鎌田實さん近著の「60歳からの『忘れる力』」(幻冬舎)。鎌田さんが外来で相談を受ける物忘れを心配する人には「ほとんどの物忘れは健康な物忘れ。認知症の心配よりオロオロ、ドギマギして短期記憶を鍛えよう」という。

 短期記憶とはさまざまな作業の必要な手順を、その作業が終わるまで一時的に覚えておく力。そうしないと作業が前に進まないからだ。それでも作業が終わったら手順は忘れていいという。覚えた物事も重要な役割をするのは全体の2割と言われる。だから8割は忘れてもいいとも。何だか気が楽になった。(昭)

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