「とんでもない蚊とのバトルの日々」

「とんでもない蚊とのバトルの日々」

 私が主宰する奨学金制度「内山アジア教育基金」の主戦場である東南アジアに3月いっぱい滞在していた。そして今は南アジアを周遊中、この先ヨーロッパをめざしている。

 私の花粉症は仕事にならないほどにひどいので、春先になると決まって花粉症のない熱帯に避難している。

 例年セブ島では海沿いに立つホテルのコテージを借り上げ、そこにこもって原稿を書くようにしている。が、ここで問題発生。

 ロングステイでは、いつの頃からか、やたらと蚊が部屋を飛びかうようになる。おそらく換気扇の隙間あたりから、あるいはドアの開け閉めの際に迷いこんでくるのだろう。

 まずは蚊取り線香の登場となる。ところが、どうしたことか、ほとんど効き目がない。

 蚊取り線香から少しでも離れると、蚊が耳障りな音を立てながら、平然と飛び回っているではないか。

 そこでリキッド式の電気蚊取りをつけたのだが、これもまるで効果がない。

 こりゃいかんということで、蚊取り線香を部屋のあちこちにおいてみる。寝ている間もベッドの周りに6個もの蚊取り線香をおいているのだから煙たくてかなわない。モクモクと燻(いぶ)されているうちに、蚊よりも先に人間サマのほうが参ってしまいそうだ。

 こうまでやっても、蚊取り線香の煙をかいくぐって蚊が何匹もベッドに侵入し、私の柔肌(?)を刺すのだから辛抱たまりません。

 で、もっと強力な殺虫剤スプレーを使うことにする。ところが、である。

 部屋中が煙るくらいに噴霧して一時退避する。しばらくして戻ってみれば、なんのことはない、何匹もの蚊が楽しげに飛び回っているではないか。

 なんでこうなるの?

 調べてみれば、フィリピンあたりの熱帯では各種の蚊取りツールに抵抗力を持つ種類の蚊が増えているという。とりわけ感染した人間が死ぬことも珍しくないデング熱やマラリアを媒介する蚊は、蚊取りツールに対して、どんどん耐性を持ちつつあるんだとか。

 さて、来年の春先も花粉症逃れで、そんな恐ろしげな蚊がわんさかいるフィリピンくんだりにわざわざ出かけなければならないのだろうか。

 花粉症はイヤだ。が、そんな蚊の犠牲にもなりたくない。う~ん、おおいに悩むところであります。

 ★メモ 厚真町生まれ。苫小牧工業高等専門学校、慶應義塾大学卒。小説、随筆などで活躍中。「樹海旅団」など著書多数。「ナンミン・ロード」は映画化、「トウキョウ・バグ」は大藪春彦賞の最終候補。浅野温子主演の舞台「悪戦」では原作を書き、苫高専時代の同期生で脚本家・演出家の水谷龍二とコラボした。

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