知床半島沖で昨年4月、死者・行方不明者26人を出した観光船「KAZU 1(カズワン)」の沈没事故で、事故2日前に行われた救命訓練の際、船のハッチのふたが完全に閉まらず、数センチの隙間がある状態で運航していた可能性があることが29日、運輸安全委員会が公表した報告書案で分かった。
運輸安全委は昨年12月、船前方のハッチなどから浸水し、沈没した可能性が高いとする調査経過報告書を発表。来月26日に関係者や有識者を対象とした意見聴取会を開くなどし、沈没原因との関連を調べる。
報告書案によると、事故2日前に行われた救命訓練に参加した同業他社の従業員が「ハッチのふたが約3センチ浮いている状態だった」と証言。「コツをつかんでいないと完全に閉めることができないと感じた。事故当日までに、専門業者が修理した様子はなかった」と話したという。
海底から引き揚げたカズワンの船体からは約50センチ四方のハッチのふたが無くなっており、状態を検証できていなかった。このため運輸安全委は、ハッチの閉まり具合を調べるため、模型を新たに作製。目撃者の証言や救命訓練時に撮影された写真を基に、ハッチのふたを固定するクリップを同じように回してみたところ、ハッチとふたの間に1・5~3センチの隙間が生じ、クリップは固定されなかった。
運輸安全委は、カズワンが何らかの理由でハッチが完全に閉鎖されていない状態で出航。揺れでハッチが開き、浸水したとみている。
運航会社「知床遊覧船」(オホーツク管内斜里町)の桂田精一社長(60)はハッチについて「(死亡した)船長らから報告を受けていなかったので、不具合はなかったと認識している」と運輸安全委に回答している。
ハッチを巡っては、救命訓練の前日に、国の代行機関「日本小型船舶検査機構」(JCI)が検査。ハッチの外観だけを点検し、開閉試験を省略していた。

















