「安全管理体制、存在せず」 人材欠如、ハッチ不具合で浸水―知床観光船事故・運輸安全委

「安全管理体制、存在せず」
人材欠如、ハッチ不具合で浸水―知床観光船事故・運輸安全委
作業台船上に載せられ、網走港に到着した観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」=2022年5月27日、網走市

 知床半島沖で昨年4月、死者・行方不明者26人を出した観光船「KAZU 1(カズワン)」の沈没事故で、運輸安全委員会は7日、最終調査報告書を公表した。報告書は、船首甲板部のハッチからの浸水を沈没の直接原因としつつ、運航会社「知床遊覧船」(オホーツク管内斜里町)では安全運航のための人材が欠如し、船体や通信設備の保守整備も不十分だったなどと指摘。船舶運航の知識・経験がない桂田精一社長(60)は名目だけの責任者で、「安全管理体制が存在していない」とした。

 報告書は、桂田社長が運航管理者に選任された2021年以降、同社には「実質的な運航管理体制が存在していなかった」と断定した。運航管理者になるには3年以上の実務経験などの要件があるが、桂田社長は満たしておらず、船舶に関する知識や経験もなかった。

 報告書によると、同社は新型コロナウイルスの影響で、20年に売り上げが約3分の1に減少。資金繰りの悪化を理由に、船長経験者ら4人を雇い止めにすると、運航管理業務が可能な人材を欠く状態に陥ったという。

 桂田社長は出航判断は現場任せで、事務所にはほとんど出勤しなかった。同社の運航中止基準「風速8メートル以上、波高1メートル以上」を踏まえると、事故当日は基準を上回っていたことは明らかで、報告書は「出航してはならなかった」と指摘した。

 死亡した豊田徳幸船長=当時(54)=については「知識・経験が不足し、的確な時機に引き返す判断ができなかった」と分析。しかし、船には有効な通信手段もなく、1人で運航判断をせざるを得ない状況だった。

 人材を欠き、船体・通信設備などの保守整備も不十分で、実質的な運航管理が行われていなかったことから、報告書は「安全管理体制が存在していない」と指摘。事故の背景として、「その影響は重大だった」とした。

 沈没の直接原因としては、昨年12月に調査経過報告書で指摘した通り、ハッチからの浸水と結論付けた。経年変化で劣化や緩みが生じる不具合があり、確実に閉まらない状態だったハッチが船体の揺れで開き、大量の海水が流入した可能性が高いと分析した。

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