始まって終わってまた始まって 鈴木(すずき) 龍也(たつや)

始まって終わってまた始まって 鈴木(すずき) 龍也(たつや)

 4月に入り、新たなスタートを切った方も世の中に多くいらっしゃることだろう。当たり前だが、何かが始まる時は何かが終わる。舞台も公演が始まる時、それまでの稽古がようやく終わる。

 子供の頃は、一日があんなにも長く、一年後があんなにも先に感じていたのに、今は一日過ぎ去るのがとても早い。仲間たちと濃密で熱気を帯びた時間を過ごした狭い稽古場から、舞台美術の立ち上がった舞台へ場所を移し、観客のいない客席から向き合うと、本番が始まる前の高揚感と、あと数ステージで終わる時の寂しさがいつも同時によぎり、時間が過ぎる速さに戸惑いさえ覚える。

 私は2児の父親だ。それぞれの子供の年齢を自分の頃に置き換えて思い返すと、舞台に関わるなんてみじんも思わなかった。物心ついた頃にはスケートを履き、リンクの上でスティックを持ち、アイスホッケーに打ち込んでいた。学生時代はサッカーボールを蹴っていた。

 自分の子供たちは、それぞれ興味のあることと向き合っている。それが大人になった時に役に立つかは分からない。でも彼らの未来のターニングポイントになっているかもしれない。それがきっかけで人と出会い、何者かになるかもしれない。ならないかもしれない。子供たちの選択したものが、単なる一瞬の楽しみだったとしても、実ははるか未来のターニングポイントであるならば、きっと彼らの今は何者かになるための準備期間なのだろう。

 もうすぐ市民参加演劇祭に向けた打ち合わせなどが始まる。「ゆのみ」には数回前まで昨年の市民参加演劇祭について書いていたのに。そんな私は、さて何者になるのだろう。

(舞台演出美術家・苫小牧)

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