競技者の年齢が比較的高いクレー射撃のスキート種目で、24歳の若者が日本勢史上初の五輪メダルを目標に歩んでいる。昨年の世界選手権やアジア大会に出場した戸口翔太郎(NKB)。4月後半にカタールで開催されるパリ五輪最終予選に向け、「あと1回チャンスがある」と出場権獲得へ奮闘中だ。
陶器製のクレーが空中に放出された後、散弾銃を構えて狙い撃つスキート。麻生太郎元首相が1976年モントリオール五輪に出場した際の種目としても知られる。戸口は日本薬科大在学時、日本協会の選手発掘事業に参加したのが競技の道に入る契機になったという。子供の頃から「ガンマニア」で、親戚が狩猟に携わる環境もあった。「趣味でやろうと思ったけど、意外と頑張ればいけそうだなと」。競技を始めて2年半ほどで日本代表入り。銃を撃つ際の反動の大きさに耐えられるよう体を鍛え、数年で体重を約20キロも増やしたと笑う。
「平均年齢は50歳くらい」(戸口)というクレー射撃の世界で、戸口の年齢での急成長は異例。強みは「練習と同じような点数が試合で出せる」という安定感だ。練習で1万発撃てば軽く100万円を超える経済的な負担がハードルだが、協会や所属企業の支援で充実した競技生活を送る。薬剤師の目標からは方向転換し、今春卒業した日本薬科大では「スポーツ薬学コース」で学んで専門知識を競技力向上に役立てた。
クレー射撃の過去の日本人五輪メダリストは、92年バルセロナ五輪のトラップ種目で銀メダルの渡辺和三のみ。スキートで初となるメダル獲得について「不可能だと思っていない」と強調する戸口は、「銃社会ではない日本の選手が取るのも意味がある」。自身の活躍で、スポーツとしての射撃への理解や認知度を高めたいという思いを胸に秘めている。

















