不幸と鬼と

不幸と鬼と

 7月27日スタートの東海テレビ・フジテレビ系全国ネット(UHB)ドラマ「嗤(わら)う淑女」の撮影中。中山七里原作。シリーズ累計25万部突破の海外でも人気の話題作。蒲生美智留という世にも美しい希代の悪女が、巧みな話術で人々を不幸に陥れてゆく。

 わたしが演じる役どころも、不幸な人々の1人(古巻佳恵)である。旦那と娘2人とローンで購入した戸建てに住む。会社員だった旦那はリストラにあってからは働かず、毎日家で小説家を目指すと言いつつだらしのない生活を送る。ストレスからか暴力的になる旦那、父親に不満を抱える娘たちの間を取り持ちつつ、生活費と学費を稼ぐためにパートに奔走するが追い付かず。そんな時、パート先の友人にコンサルタントを紹介される。それが蒲生美智留であった。

 台本をもらい、さあ読もうと行きつけのロイヤルホストへ行き、ドリンクバーでホットコーヒーと炭酸水を準備。3時間は居られるぞ、台本を頭に入れようと張り切って読み始めたはいいものの、あまりの不幸の転落に気がめいってくる。古巻佳恵の最後のシーンを読んだ瞬間に吐き気がしてきた。

 3時間の予定を30分で切り上げて帰宅。ベッドに横になり、なんなんだ、この不幸は、しかし、一歩間違えたら、誰だって、こんな人生は待っていそうで、恐ろしい恐ろし過ぎる! いけないいけない、この思考をいったん停止し寝ることにしようと、その夜は娘の夕飯を作ることも拒否したものだ(どれだけストーリーに入り込んでいるんだ!)。撮影は滞りなく、気分は滞りしかなく、順調に進んでいる。

 さて、監督の松木創さんは登別市出身。この連載をスタートさせていただいてから、知り合う人の中に北海道の人はいないか、と探すことが日常になっているのだが、登別出身の方は初めてだ。

 松木監督と「登別は苫小牧の近くですよ」「あ、じゃあ下の方ですね」とやりとりしつつ。調べてみると、なんと魅力的な登別。歴史とともに人々を癒やしてきた日本有数の温泉地とある。地獄谷と鬼というワードも出てくる。わたしは鬼が好きだ。鬼は優しい。地獄で、人間の仕業を罰しなくてはならないお仕事で、本当は優しいものだから、つらすぎて赤くなったり青くなったりしながら地獄にいる。鬼は心で泣きながら役割を果たす。諸説あるが、わたしはこの解釈が好きだ。

 一方この人、蒲生美智留に心はあるのだろうか。世の中には心で動かぬ者もいる。恐ろしや。この夏は人の不幸を高みの見物。幾分涼しい夜になるに違いない。お楽しみに!

(タレント)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る