生まれつき聴覚障害がある苫小牧市糸井の大沢勇一さん(58)が、貸し切りバス事業などを展開する日軽北海道(苫小牧市晴海町)に、バス運転手として採用された。大沢さんはずっと抱き続けてきた夢をかなえ、乗務に向けて訓練に励んでおり、「お客さまを乗せることを楽しみたい」。北海道運輸局によると、道内で聴覚障害者が運転手になるのは初めてで、運転手不足の解消にも期待がかかる。
大沢さんは桧山管内今金町出身。父親がバスやダンプカーなどの大型車の運転手を務めていた影響を受け、自身もバス運転手になりたいという夢を抱いてきたが、聴覚障害で心ならずも別の仕事に就いてきた。
しかし、2016年の道路交通法改正で、聴覚障害者でも補聴器を付けて一定レベルの聴覚があれば、バスやタクシーの営業運転に必要な2種免許を取得できるように。大沢さんも約6年前に免許を取得した。
大沢さんは普段から補聴器を付けて生活。緊急車両のサイレンやクラクションなど、運転時に必要な一定の音は聞こえている。また、相手の口の動きを読むことで意図をつかめ、電子ペーパーなどの活用でコミュニケーションも図れる。
ただ、当初は複数のバス会社を受験したが採用には至らなかった。同社は道運輸局や公共職業安定所を通じて大沢さんのことを知り、不特定多数の利用者との会話が少ない通勤用バスなら問題ないと判断。7月22日付で採用した。
大沢さんは、同社が受託する企業の通勤用バス、市内4路線を担当する予定。現在は自動車教習学校の講師経験もある先輩運転手成田直樹さん(60)が、筆談やハンドサインなどを使って指導している。
バスの車体幅などに慣れるため、日本軽金属苫小牧製造所(晴海町)の構内で練習を積み、公道でも2週間ほどかけてルートを覚える訓練も実施。9月下旬にも乗務を始める予定だ。
大沢さんは、採用決定を「すごく喜んだ」と振り返る。利用者とのコミュニケーションに「不安がある」と率直に明かしつつも訓練に励み、成田さんは「20日間ほど練習してきたが、努力もするし、センスもある」と太鼓判を押す。
同社によると、通勤バスを使う企業からは逆に支援の申し出があるなど、周囲も温かく受け入れているといい、同社運輸課の松原浩二課長(56)は「人手不足で管理職もバスの運転をしている状況なので、大沢さんは救世主」と強調する。
その上で大沢さんの採用を決めた理由について「リスクもあるが社会貢献の一環として、障害者の雇用にも力を入れるべきではないかと考えた」とし、今後も運転手などで障害者雇用を検討する考えを示す。
また、道運輸局室蘭運輸支局は運転手不足の解消に向けて、市内で障害者の就業を調査していたところ、大沢さんのことを知って企業側の仲介に尽力した。
同支局は「障害があっても運転手になれるという理解が社会や企業に広まってほしい。(大沢さんの採用で)偏見や先入観の払拭(ふっしょく)につながれば」と期待している。
















