白老町は4日、今年度新たに始めた閉鎖循環型陸上養殖試験導入事業に関する勉強会を、漁業関係者らを対象に、いぶり中央漁業協同組合白老支所の倉庫(町石山)で開いた。町地域おこし協力隊員で同事業を進めている元北海道栽培漁業振興公社の技術顧問川下正己さん(67)ら専門家の講話などを通じ、漁協や町などから参加した職員約25人が同事業の概要や将来性に理解を深めた。
閉鎖循環型陸上養殖は、高度な水処理技術で海水を陸上の閉鎖空間で循環させ、魚を養殖する仕組み。町は、魚の安定生産、漁業関係者の所得安定、町独自の水産資源のブランド化を目的に、試験導入した。町内に低コスト型の簡易養殖施設を整備してホッケを飼育し、ランニングコストのデータなどを収集、分析する3カ年の実証事業を、産学官の連携で進めている。
勉強会では、川下さんが陸上養殖のシステムの概要や魚類養殖の可能性について講話した。伊達市でカレイの高級魚マツカワの養殖に関わった自身の経験を基に、同事業で使用する設備について「遊休機材を活用でき、専門メーカーが設計した装置より安価に陸上養殖を導入できる」と説明。小規模であれば初期投資などの面で利点があることを強調した。試験導入ではホッケを扱っているが、「アイデア次第でさまざまな魚種、飼育方法に用いることができる」と今後の発展性にも言及した。
同事業が試験導入された背景には、海洋環境の変化に伴う主要魚種の漁獲量減少がある。漁業関係者からは「ホッケ以外の魚種の養殖事業も早急に進めてもらいたい」と声が上がり、町の担当者は「今後、他の魚種での可能性も見いだしていきたい」と述べた。
北海道大学水産学部から設立された企業AQSimの倉橋康平代表(23)による講話もあり、魚体、水質、ランニングコストのデータ収集と分析について状況説明が行われた。
その後は、ホッケを養殖している町虎杖浜の施設を見学。装置を目の当たりにした町竹浦の漁業、平田哲博さん(66)は「説明を受けて施設も見て、自分でもできそうだと手応えを感じた。(養殖ホッケの)試食会を開くなどして町民に味をみてもらうところまでいけば、(実証事業は)成功といえるだろう」と語った。

















