(1)財政 一般会計2年連続で過去最大に 基金取り崩し事業費捻出

(1)財政 一般会計2年連続で過去最大に 基金取り崩し事業費捻出
苫小牧市が新年度予算案を発表した記者会見。公務に復帰した岩倉市長が説明した

 苫小牧市の2024年度一般会計予算案は23年度当初比7・1%増の883億1000万円で、過去最大を2年連続で更新した。47の新規事業を盛り込んだが「積極型」とは言い切れず、人件費や扶助費などの増加が背景。4企業・3特別会計を合わせた全会計の予算案も1449億900万円で、現在の会計数となった16年度以降で過去最大となった。

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 主要事業のうち、重点配分した子育て応援では、8月から通院助成を現在の小学校入学前から高校卒業まで拡充する子育て支援医療助成事業1億2700万円を計上。人口減少社会対策では、移住・定住・関係人口促進事業3300万円に刷新するなど、社会的課題に向き合う姿勢を示した。

 脱炭素社会の実現に向け、国から認定された脱炭素先行地域づくり事業に4000万円、今年度に引き続き実施する全市的運動「ゼロカーボン×ゼロごみ大作戦!」に683万円を盛り込んだ。さらに経済活性化や防災、環境衛生など、各分野にきめ細かく予算を配分した。

 歳出面では、苫小牧市民文化ホールの建設や植苗小中学校の改修などで費用が増加し、主要事業費は22・8%増の227億5200万円。経常収支は11・3%減ながら23億6900万円の黒字となった。

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 一方、歳入は、3割を占める柱の市税が国の定額減税を踏まえ、1・8%減の283億3300万円と試算。借金に当たる市債は74億9900万円で41・9%増えた。24年度末の市債残高は880億1000万円に膨らむ見込みだ。

 財源不足に対応するため、貯金に当たる財政調整基金から、過去最大となる16億7000万円を取り崩した。基金残高は24年度末で27億6000万円になる見込みだ。

 財政運営持続化計画で示した目標の20億円以上を上回るが、基金の取り崩しで事業費を捻出する構図。市財政部は「今後、物価高の影響が出てくる可能性もあり、厳しい状況は変わらない」と危機感を持つ。

 岩倉博文市長は14日に開いた記者会見で、24年度各会計予算案について「そんなに財政を悪化させることなく予算編成ができた」と手応えを語りつつ「アフターコロナや地方の経済について、いまいち見えない部分がある」と懸念も示した。財政状況は厳しさを増す中、地域経済の活性化などを実現できるか、岩倉市長の手腕が問われる。(室谷実)

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 苫小牧市の24年度予算案について、財政、子育て支援、脱炭素、中心市街地活性化の視点から検証する。

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