穏やかな日本人 鈴木(すずき)龍也(たつや)

穏やかな日本人
鈴木(すずき)龍也(たつや)

 関東の友人からSNSで春の訪れを感じる写真が届いた。しかし外へ目をやると雪。どうやら北海道はまだのようである。世間は「日経平均株価がバブル以来の最高値を更新」とのニュースで沸き立っているようだが、実質賃金は上がっておらず、庶民の懐もまだまだ冬である。

 メディア各社は国会議員の大がかりな犯罪疑惑の報道をやめ、メジャーリーガーの結婚ニュースや、お笑い芸人のスキャンダルを連日追い掛けていく。需要と供給とも言うべきか。最近はこの国のいびつさをひしひしと感じているところである。国民の政治への怒りが怨嗟(えんさ)へと変わりつつある。

 アングラ(アンダーグラウンドの略)は、1960年代から70年代にかけて全盛期だった舞台表現の流れである。根底に当時の学生運動や市民運動、労働運動の思想と通底するものがあり、反体制や反商業主義の思想がそこにあった。実験的で独特な世界観を持ち、時には暴力的な表現や過激な表現もあったと聞く。今の演劇はその流れからは変わった表現になっている。怒ることに関し、日本人は海外の人々と比べて表現がとても穏やかで小さい。

 最近あった裏金疑惑と言われる報道などを考えると、おにぎり一つの万引きで逮捕される高齢者がいる一方、数千万円を脱税して金を手にしてもとがめられない人がいる。そんな不条理に対し、何も思わない人ばかりではない。暴力はもってのほかではあるが、その思いを何かの形で表現し、表明するということが必要な時代になってきた気がする。

(舞台演出美術家・苫小牧)

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