苫小牧市と千歳市にまたがる樽前山(1041メートル)の登山者数は2018年度、胆振東部地震の影響などで前年度比約5000人減の約2万8000人と大きく落ち込んだ。19年度は8月末時点で1万5000人を超え、年間3万人の大台を回復するペースだが近年、急増している外国人の立ち入り禁止場所への侵入や軽装登山が後を絶たず、安全確保が課題となっている。
樽前山は車で7合目まで行けて気軽に登れる上、美しい高山植物が豊富。珍しい溶岩ドームも見られることなどがから道内外の登山客の人気を集めている。
市観光振興課によると、08年度に1万8292人だった登山者数は10年度2万574人、12年度2万3686人、15年度2万4996人と増加傾向。17年度には3万3605人と、1998年度以来の3万人超えを記録した。
18年度は大雨の影響で8月下旬、アクセス道路の道道樽前錦岡線が通行止めになり、9月に胆振東部地震が発生。登山者数は同月が前年度比1779人減の4568人、10月も同525人減の4640人と激減し年間では、同5151人減の2万8454人となった。
19年度は5月下旬以降、平日でも晴れた日には1日100人以上、週末は250人ほどが訪れている。8月上旬には同400人を超えた日もあり、同月末までの登山者数は、1万6694人を数えた。
月別に見ると例年、6~7月と9~10月がピーク。17年度は8月下旬から10月末までに約1万5000人が登っており、今年度は3万人の大台回復は濃厚だ。
2年ほど前から特に急増しているのが、外国人登山者だ。7合目ヒュッテ管理人によると、昨年は1日5~10人だったのが今年は10~20人ほどと倍増。以前から多かった中国、台湾、シンガポール、タイなどアジア系に加え、今年は米国、フランス、英国、スペインなど欧米各国からの登山客も目立つ。
8月下旬、山頂を目指し、景色を楽しみながら登山道を歩いていたフランス人女性のクロイ・ボカバルさん(25)は「インターネットで支笏湖の眺めが美しいと知って来た。樽前山登山は楽しい」と笑顔を見せた。
市は昨年度から外国人登山客数の集計を開始。18年度は994人、19年度は8月末時点で909人に上る。
同山を管轄する市観光振興課は「近年、同山は海外の雑誌にも紹介されており、外国人登山客は増えている。苫小牧の素晴らしい自然を広く知ってもらえて喜ばしい」と歓迎する。
一方で、「外国人観光客の中には、登山道から外れて高山植物の生える場所を歩いたり、火山性のガスが出て危険な溶岩ドームに近づこうとする人もいる」と7合目ヒュッテ管理人の鈴木統(はじめ)さん(67)。「Tシャツ1枚で登るなど軽装が目立つ上、午後から登るケースも少なくなく、日が暮れてから事故に遭わないか心配している」と打ち明ける。
これまで外国人による目立った事故やトラブルは起きていないが、日本語がほとんど通じない人もおり、関係機関・団体で組織する樽前山火山防災会議協議会は、3年前から立ち入り禁止場所などを英語で記したパンフレットを7合目登山道入り口に設置するなどし、危険箇所を周知。市も「外国人の増加が続くようなら、看板設置なども検討しなければならない」(観光振興課)としている。
















