苫小牧の山口時計店・山口敏彦さん 古時計に命吹き込むー岩内の帰厚院

苫小牧の山口時計店・山口敏彦さん 古時計に命吹き込むー岩内の帰厚院
帰厚院の古時計と山口さん(提供)

 苫小牧市錦町の山口時計店の店主山口敏彦さん(75)は、後志管内岩内町の寺「帰厚院(きこういん)」本堂にある製造から90年以上たち、何十年も止まったままだった振り子時計を修理し、寺の関係者を喜ばせている。古時計に、命を吹き込んだ山口さんは「職人として心に残る仕事になった」と感慨深げだ。

 時計は旧服部時計店(現セイコーホールディングス)が製造、開発部門として設立した旧精工舎製。高さ約150センチで、1時間ごとに時刻の数だけ「ボーン」と鳴るゼンマイ式振り子時計だ。

 正確な製造年は不明だが、「1928年 婦人会寄贈」と記されており、90年以上前と推測できる。山口さんは「これだけ古い国産時計が現存するのは珍しい。100万円以上の価値があるのでは」と話す。

 本堂にある21(大正10)年完成の高さ6・8メートルの木造大仏像が東京以北最大で、岩内町の有形文化財1号に指定されている帰厚院。55年以上前からいる古株の僧侶によると、時計は「来た当時すでに動いていなかった」。成田賢一住職(43)はこれまで時計店数軒に修理を依頼してきたが、「さびや部品の古さを理由に断られていた」と語る。

 職人歴60年の山口さんは、中学卒業時に家業を継ぐことを決意し、父の知人が経営する同町の旧畑時計店で5年ほど修業。より精密な高級時計、装飾品について学ぶため東京都内の貴金属店審美堂で約3年間の研修を経て、山口時計店で働き始めた。

 8月初旬、そんなゆかりの地である岩内にある同院の大仏を見物しようと同院に足を運んだ際、本堂の柱の高さ約5メートルの位置に掛けられた時計がすぐに目に留まった。成田住職から長年止まったままだと聞き「技術者として育ててくれた町に恩返しをしたい」と修理を申し出た。

 山口さんはブラシや紙やすり、時計専用の研磨盤「グラインダー」を使い分け、さびを丁寧に落とした。摩耗した部品の一部は、親交のあるむかわ町の法城寺から譲り受けた同じメーカーの古い時計の部品を使用。通気性の良い場所に掛けられ、心臓部であるゼンマイのさびが軽かったことも幸いし、通常1カ月はかかる修理を10日ほどで終えこのほど、同院に届けた。

 時計の内部を確認した時は「本当に修理できるか不安もあった」と山口さん。「さびはどんどん広がるため、他の仕事を中断して取り組んだ」と言う。

 54年に町内で起きた大規模な火災「岩内大火」で、同院に避難してきた町民の様子も見守ってきた古時計。現在は寺を訪れる人たちに歴史を感じてもらうため、より目に付きやすい帳場の横に掛けられ、再び時を刻む。

 成田住職は「味わいある時計にいとおしさを感じる」と目を細めた。

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