国は9月末、道内外13自治体に対してアイヌ文化を生かした地域振興策などに交付金を支給することを決めた。今年度から5カ年で推進する事業だが、苫小牧市は現時点で具体的な事業を構築できておらず、初年度の交付金申請を見送った。アイヌ施策推進法に基づく目玉施策とあり、地元関係者からは落胆の声が上がる。
5月に施行されたアイヌ施策推進法に基づき、今年度始まった同交付金。アイヌ文化を生かした地域や産業、観光の振興などを支援する内容で、事業の費用負担は国が8割、市町村が2割となっている。
地域でアイヌ民族の意向を踏まえるなどし、施策推進の計画案を策定した上、国に申請して事業が認められる必要がある。9月に今年度分の申請が終わっており、近隣では白老町、千歳市への交付が決まっている。
苫小牧市は今年度分の申請を見送っており、アイヌ分野を所管する福祉部総合福祉課は「交付金でどのような事業をするのか検討中。具体的な話をできる段階にはない」と説明する。同法施行に合わせて庁内の財政、総合政策、教育委員会など計6部署で情報共有しているといい「苫小牧アイヌ協会などとも話をしながら検討を続けたい」とする。
ただ、アイヌ施策の構築をめぐって横断的な検討組織も立ち上げておらず、今年度交付が決まった13自治体に比べると遅れを取っている感は否めない。千歳市はアイヌ分野を苫小牧市と同様、従来は保健福祉部が所管していたが、事業が多岐にわたるため庁内の調整をする企画部に担当を配置。同市は「初年度から動き出すことが大事。(交付金2年目以降の)途中で申請しても認められるかは分からない」と語る。
苫小牧アイヌ協会の澤田一憲会長は「市には要望を伝えてきただけに残念」と話す。その上で「単年度で考えるのではなく、中長期的な視点に立った取り組みが不可欠」とも。児童を対象にしたアイヌ語教室の拡充、先祖の霊を祭る碑や慰霊施設の建設など構想は幅広く、市の幹部との意見交換を希望している。
市内のアイヌ伝承グループ苫小牧うぽぽの佐々木義春会長も「動きの遅さを感じる」と残念がる。同会は伝統の踊りや歌のほか、刺しゅう、彫刻などの伝統工芸継承にも力を入れており、「アイヌ文化を国内外に発信する講座開催など構想はある。市や市教育委員会に協力を呼び掛けているところ」と言う。ニュージーランドの先住民マオリとの20年以上にわたる交流に触れ、「来年、(苫小牧市は)ネーピア市と友好都市になってから40年。先住民同士の交流などを実現できないか訴えていきたい」としている。
















