【京都市、北畠授】男子第70回・女子第31回全国高校駅伝競争大会が22日、京都市内で開かれた。男子は7区間42・195キロ、女子は5区間21・0975キロをそれぞれたすきリレー。男女共に宮城県代表の仙台育英が栄冠をつかんだ。2年連続10回目の都大路に挑んだ男子の北海道栄は、2時間6分45秒とチーム歴代最高記録を大きく更新する力走を見せたが、順位は前回(21位)には及ばず30位となった。
けがで出遅れていた3年生の工藤吏晟を主要区間4区に置くなど、10月の道予選よりも強力な布陣を実現させた道栄。1区でエース小野隆一朗主将(3年)が区間4位の快走を見せ、中盤まで10位台をキープしていたが、その後は徐々に順位を落とした。
日本陸上競技連盟、全国高校体育連盟などが主催した駅伝版のインターハイ。男子は70回目の記念大会のため、各都道府県の予選会覇者と全国11ブロックの記録上位計58チーム、女子は47チームがそれぞれ出場した。
【男子】
▽順位 (1)仙台育英(宮城)2時間1分32秒(2)倉敷(岡山)(3)佐久長聖(長野)(4)九州学院(南九州地区熊本)(5)学法石川(福島)(6)大分東明(大分)(7)宮崎日大(宮崎)(8)自由ケ丘(福岡)
▽区間賞
1区 佐藤一世(八千代松陰・千葉)28分48秒
2区 白井勇佑(仙台育英・宮城)、越陽汰(佐久長聖・長野)、佐藤圭汰(洛南・京都)8分7秒
3区 フィレモン・キプラガット(倉敷・岡山)22分44秒
4区 伊井修司(東農大二・群馬)、松並昂勢(自由ケ丘・福岡)22分55秒
5区 上仮屋雄太(須磨学園・近畿地区兵庫)8分36秒
6区 ムチリ・ディラング(仙台育英・宮城)14分6秒=区間新=
7区 小牧波亜斗(洛南・京都)14分8秒
【女子】
▽順位 (1)仙台育英(宮城)1時間7分0秒(2)神村学園(鹿児島)(3)筑紫女学園(福岡)(4)興譲館(岡山)(5)青森山田(青森)(6)須磨学園(兵庫)(7)立命館宇治(京都)(8)諫早(長崎)
▽区間賞
1区 小海遥(仙台育英・宮城)19分29秒
2区 テレシア・ムッソーニ(世羅・広島)12分15秒=区間新=
3区 清水萌(仙台育英・宮城)9分24秒
4区 山中菜摘(同)9分20秒
5区 エリザベス・ジュリー(青森山田・青森)15分28秒
―小野、区間4位の好走
2003年に上野裕一郎(当時佐久長聖高)=現立教大男子駅伝監督=が打ち立てた28分54秒の1区日本人最高記録を3人が上回った大会史上最速とも言えるハイレベルなレース展開で、道栄の小野主将が存在感を見せた。スタートの陸上競技場からロードに流れ込んだ直後に先頭集団へ躍り出ると、「景色がよく見えて気持ちよかった」と終盤まで区間賞争いを演じる好走。道栄の名を一気に全国へとどろかせた。
残り1キロ時点で集団から抜け出る算段だったが、「位置が悪かった」と、路面に起伏が付いた沿道側を長く走った分、足に負担が掛かり、上位選手のスパートに付いていけなかったと言う。「自分の力は出し切れた」と区間4位、日本人歴代5位となる28分55秒の驚異的な記録を残すことができた半面、「区間賞を狙っていたので悔しい部分もある」と小野は話した。
同級の工藤と共に入学当初から貴重な戦力として期待されていたが、1年目は両足の疲労骨折で全道駅伝すら経験できずに終わった。それでも「けがをした時のケアや調子を戻していく方法」を習得しながら走りにより磨きを掛け、2年時に都大路で3区を担い17位。今季も春先に疲労骨折を経験したが、7月ごろに復帰すると11月末の道外記録会トラック10000メートルで29分16秒36の驚異的な記録を出すまでになった。
「トラックよりロードの方が得意」と言うように10キロのタイムは一気に28分台に突入した。「ちょっと足が疲れたなと思うくらい。まだ出せる」と豪語する大器は来春、関東の駅伝強豪校に進学予定。「1年目から箱根を目指す」と頼もしい。
―苫小牧出身の森、主要3区で堂々
唯一の苫小牧出身選手・森が、1年生ながら都大路の主要区間3区を堂々と走り切った。レース前こそ初の大舞台に緊張気味だったと言うが、エース小野の好記録を知り「一気に集中できた」。設定タイムを30秒近く上回ったほか、前回3区を担った小野よりも11秒も速い力走ぶりだった。
上りと平たんが交互に訪れるタフなコースレイアウト。「特に上りでペースが落ちないように」と事前の試走時から、勾配のある地点をしっかり頭にたたき込んだ。外国人留学生が多く配置される区間。「抜かれても自分のペースを乱さないこと」など小野からのアドバイスも糧にした。
「上りのきつい区間で十分に活躍してくれた」と山中監督は太鼓判を押す。小野、工藤といった実力者が抜けた来季以降のエース候補。「ずっとそういう立場になりたいと思っていた」と頼もしい森。さらに進化した姿で都大路に帰ってくることを誓う。
―6区宮本、初舞台に「感動」
3年目にしてようやくつかんだ都大路舞台をかみしめるように走った。設定タイム(15分5秒)には惜しくも届かなかったが「楽しく走り切れた。沿道からの応援もすごくて、感動しっ放しだった」と宮本は笑みを浮かべた。
「兄のような存在」と慕う道栄OBで同郷の工藤拳大(2015年卒)からのエールも力になった。本番前日の21日にインターネット交流サイト(SNS)のラインで出走を報告。まるで自分のことのように喜び、14年の都大路で3区を担った経験を基に「オーバーペースにならないように楽しんで」と激励してくれた。
前回は登録10人に入ったものの出走はかなわず。雪辱を期した今回は、都大路の出走者を選考する14日のトラック5000メートル記録会(岐阜県)で自己ベストを2秒近く縮め、見事6区の座を射止めた。
工藤の背中を追うように強豪校の門をたたいたが、1年目は全くと言っていいほど練習に付いていけず、マネジャーや競歩に取り組んだ時期もあった苦労人。「諦めずに頑張れば、夢がかなうことが分かった」精進の3年間だった。
道内で進学予定の大学でも駅伝は続ける。次のステージでは「1年目から主力として走りたい」と志は高い。
―好記録も山の手に雪辱ならず
1区で大きくアドバンテージを取り、後続が粘る想定通りの展開。国学院大に進んだ藤本竜、川原樹に加え、昨年2年生だった小野、工藤の4本柱で打ち立てた前回大会の2時間8分39秒を大きく上回る上出来のたすきリレーだった。
昨年の都大路に当てはめれば外国人留学生擁する全国強豪校にも劣らない15番目のタイム。今大会は出場選手の大半が使用したナイキ社製のクッション、反発性に優れた厚底シューズの恩恵もあり、レースがより高速化。優勝、準優勝が2時間1分台、入賞圏内の8位までが2時間2分台と一段とレベルは高かった。
このため順位は昨年に及ばず。1区で1分47秒もの差をつけた札幌山の手にも5区で抜き去られた。最終的に55秒差となり全道予選の雪辱はかなわず。「打倒山の手を達成できなかったのは残念」と山中監督は厳しい表情を浮かべる。
前身の道日大時代を含めたチーム歴代最高記録を樹立した自信と、ライバルに今季2敗を喫した悔しさを飛躍の糧にする。来年は通常大会に戻るため、北海道から都大路に挑めるのは予選会優勝の1校のみ。
2区を担った宮武(2年)は「来年もこの舞台に帰ってこられるように、走ったメンバーを中心にチームを引っ張りたい」と意気込む。山中監督は「悔しい思いを胸に頑張っていけば、次は山の手を倒せるはず」と新チームの奮起に期待した。
道栄選手記録
区間 名前 タイム 区間順位 チーム順位
1区10キロ 小野隆一朗 28分55秒 4位 同
2区3キロ 宮武和矢 8分52秒 56位 10位
3区8.1075キロ 森春樹 24分32秒 22位 13位
4区8.0875キロ 工藤吏晟 24分26秒 43位 23位
5区3キロ 川内唯空 9分10秒 44位 25位
6区5キロ 宮本蒼人 15分26秒 54位 28位
7区5キロ 藤本雄大 15分24秒 50位 30位
―都大路に挑んだ道栄選手
1区小野隆一朗(3年)
「自分の力は出し切れたが、区間賞を取りたかった。上位3人は最後まで余裕を持って走っている感じだった」
2区宮武和矢(2年)
「悔しいのひと言。7区だった前回大会とは違い、抜かされることが多く、自分のペースを見失ってしまった」
3区森春樹(1年)
「目標にしていた小野さんのタイムを破ることができてよかった。みんな状態が良くて山の手に勝てると思っていたが、また負けたのは悔しい」
4区工藤吏晟(3年)
「前半は悪くないペースで走れたが、けがで事前の調整がうまくいかなかったこともあり、後半まで体力が持たなかった」
5区川内唯空(3年)
「小野の走りを見て勇気づけられた。持てる力はすべて出し切れたと思う。悔いはない」
6区宮本蒼人(3年)
「3年間でようやく自分の力で都大路出走を勝ち取ることができた。ずっと感動しながら、楽しく走り切れた」
7区藤本雄大(1年)
「いい入り方はできたが、それでも抜かされてしまう。全国のレベルの高さを感じた」
―選手後押し、地元から50人の応援団
2年連続で全国高校駅伝に挑んだ道栄駅伝部の勇姿をひと目見ようと同校教職員、選手保護者ら50人の応援団が22日、決戦の地・京都を訪れ、ランナーたちを沿道などから声援で後押しした。
「本当に感動した」と興奮ながらに選手たちの頑張りをたたえたのは道栄の渡邊和弘校長。特に1区小野主将の闘志あふれる走りを挙げ、「努力を重ねれば全国の大舞台で活躍できることを証明してくれた。後輩たちのいい目標にもなったはず」と目を細めた。
校内など一部にのみ告知した50人限定の応援ツアーが、今季は募集開始早々に定員に達したことを挙げ、「すごく意義のあること。次は町内の方にも声を掛けるなど、より応援の体制を整えられれば」と話した。
釧路管内白糠町から応援に駆け付けた小野主将の父・隆さん(56)は、1区の残り700メートル地点の沿道で力走する息子の姿を見守った。「他校の選手たちも一緒になって応援してくれていた。感動した」と笑顔。小さい頃から走ることが大好きで、「強くなりたい」と自ら道栄の進学を志願した。全国屈指のランナーに成長してくれたことを誇りに感じていた。






















