苫小牧市中学生主張発表大会①最優秀賞 「生き延びる力」―緑陵中2年 二瓶 宝來さん

苫小牧市中学生主張発表大会①最優秀賞 「生き延びる力」―緑陵中2年 二瓶 宝來さん

 赤茶けた大地。どこもかしこもガタボコ道。

 クラクションがけたたましく鳴り響く町。ある者がない者へ分け合うことが当たり前で、その日のランチを買うことができた子は、買うお金を持たなかった子へ分け合う。行き交う人は皆、目が合えば、それだけで笑顔を向けてくれるカンボジア。

 我が家では、私が物心ついた頃から、外国人学生のホームステイの受け入れをしていました。アメリカ、インドネシア、韓国、台湾、ロシア、ニュージーランドなど、これまで約20人の学生達が我が家にやってきました。その中には生まれた国を離れ、他国でマイノリティとして暮らす学生や、厳しい戒律を守る生活を送るムスリムの学生、自分の性に悩むLGBTの学生もいました。

 最初は言葉もよくわからず、ただただおうちに来て、一緒に遊んでくれたりするお兄さん、お姉さんの存在が子ども心に嬉しく、楽しく過ごしていただけでしたが、私はいつしか彼らから時折感じる見知らぬ世界の様子に「自分が思っている世界と本当の世界は違うのかもしれない」「自分は知っているようで、実は何も知らずにいるのかもしれない」とぼんやり感じるようになりました。そうして私は、自分の目で直接日本の外を見てみたいと強く思うようになり、今年の夏休みに苫小牧市子ども国際交流事業に参加し、生まれて初めて日本を飛び出し、カンボジアへ行くチャンスを手にしました。

 生まれて初めての外国。自分の足で降り立ったカンボジアで、私はこれまで漠然と「日本に生まれた私は豊かで幸せ」「貧しいカンボジアの子はかわいそう」と思い込んでいた自分に愕然としました。

 私達は今、テレビやスマホを通じて、ものすごい量の情報を自分の部屋から一歩も動かず、誰にも会うことなく、いとも簡単に得ることができます。わからないこと、興味があることはSiriが瞬時に教えてくれます。遠い海外のほんの小さな情報ですら、様々な方法で知ることができます。でもこれは、本当に「知る」ことになるのでしょうか。

 これまで私がテレビやスマホを通じて得てきた情報には、それを発信する人のフィルターがかかっていて、私はそのフィルターごしに物事を捉えて知ったつもりになっていて、正確なものは自分の目で見て体験しないと知ることができないのだ、とカンボジアの小学生達の屈託のない笑顔に触れた時に気づいたのです。そして、さらには、その場で沸き上がる感動、感情、自分や相手の心の動きは、リアルにその場に身を置いたからこそ得ることができる、かけがえのない「知る」なのです。

 「百聞は一見にしかず」とは、まさにその通り。情報が溢れかえっている現代だからこそ、自分の足を運び、自分の目で見て、手で触れ、そこにいる人達と出会い、コミュニケーションを取り、本当に「知る」ことがより大切なのだと思いました。

 そして「百聞は一見にしかず」の続きは「百見は一考にしかず」です。自分で確かめた物事を、どんなふうに感じるのか、そこから何を考えるのか、たくさん心と頭を動かすことが必要です。2030年、今ある仕事の大部分がAIに置き換わると言われています。人間の知能を超えるAIが出てくるとも言われています。そんな未来へ向かう今、私達が身につけることを求められている「生き延びる力」とは、まさにこれ。便利な世の中において、便利さに溺れず「自分でモノを見て、心を動かし、自分で考える力」なのではないでしょうか。

 そしてこの「百聞は一見にしかず」「百見は一考にしかず」には「百考は一行にしかず」という続きがあります。

 私は10代の今、たくさんの経験を重ね、豊かな心を育て、自分で考えたことを行動に移せる大人になりたいと思います。

 さあ、皆さん。便利なAIに頼って世界を知るだけで満足しますか。スマホを置いてフィルター越しではない、生の世界を知りにいきませんか。迫り来る新しい時代に、AIに負けない私達になりましょう。

    ◇   ◇

 第43回苫小牧市中学生主張発表大会(市教委主催、2019年12月、市文化交流センター)で、市内の各中学校の代表生徒がそれぞれの思いを発表した。最優秀賞、優秀賞、優良賞、努力賞に選ばれた作品を紹介する。

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