王子イーグルス シーズン総括(下)来季雪辱なるか ホームで強さ発揮

王子イーグルス シーズン総括(下)来季雪辱なるか ホームで強さ発揮
今季から加入し、攻撃の要として活躍を見せたFW高木=2月23日、プレーオフセミファイナル第2戦、韓国アニャンアイスアリーナ

 ■苫小牧で声援背に挑んだ終盤戦

 レギュラーリーグ(RL)半ばで王子は一定の勢いを付けていた。2020年の初戦となったホーム苫小牧での栃木日光アイスバックスとの3連戦。3戦ともに両チームのGKが好守を連発し合い、我慢の展開が続いた。王子は日本チーム最上位の力をここ一番で出しながら2勝1敗で勝ち越し、次の韓国対2チームの遠征6連戦では4勝2敗としたものの、上位サハリン(ロシア)、アニャンハルラ(韓国)を捉え切れず3位に終わった。

 今季は、苫小牧開催試合で10勝4敗と高い勝率を残していた。特に昨年9月24日のハルラ戦から1月12日の栃木日光戦まではホーム9連勝を収めるなど地元の声援によく応えた。菅原宣宏監督や選手たちも「苫小牧のファンの声援には本当に力を感じる」と口をそろえる。

 2勝した方が勝ち抜きとなるプレーオフのセミファイナル。下位もホーム試合が組み込まれるファイナルの苫小牧開催実現を―強い思いを抱いたチームは敵地・韓国へと向かった。

 ■セミファイナルに惜敗

 プレーオフセミファイナルの相手は、RLでは4勝2敗と相性の良かった2位アニャンハルラ。決戦前には楽しげながらも引き締まった雰囲気で練習を行って士気の高さをうかがわせ、大一番に備えていた。

 迎えた大事な初戦では開始からペースをつかめなかった。運動量に定評のあるハルラの攻勢に対応できず、序盤でいきなり2失点とビハインドの展開に。菅原監督は「走り負けてはならなかった」と振り返る。

 第2ピリオドからは踏みとどまってチャンスを幾つか築きかけても、ハルラの守備を崩せずにいた。第3ピリオドには、FW中屋敷侑史が押し込んで反撃の流れが来たが、直後にハルラに追加点を決められて1―3の敗戦。主戦GKドリュー・マッキンタイアが負傷し、スタメン起用されたGK成澤優太も「1対1は止めるように意識した」と強い気持ちで臨み好セーブを見せる場面はあったものの、ハルラの陣容が仕掛けてくる力強いシュートに苦戦した。

 第2戦もハルラに先制点を許した。しかし、FW大澤勇斗、高木健太、タイラー・レデンバックが相次いで得点して畳み掛け、持ち込みたかった先行の展開にした。菅原監督は「とにかく相手よりも走る。そのことだけは選手に言ってきた」。運動量とプレーの精度が結び付いて5―4と勝ち、勝敗をタイに戻した。

 運命の第3戦は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から異例の「無観客試合」となった。3度ハルラに先制される展開となったが、ルーキーDFハリデー慈英とFW大澤の活躍で食らい付き、白熱した接戦を繰り広げた。第3ピリオド序盤、一瞬の隙を突かれて勝ち越しを許し、終了前に6人攻撃を仕掛けても2―3で及ばなかった。

 ■決め手となった「スペシャルプレー」

 反則した選手が一定時間退場するアイスホッケー。この際に対抗し合う人数が変動する「スペシャルプレー」では、人数が多ければ得点、少なければ守備の完遂が求められる。プレーオフでも明暗を分けたキーポイントとなった。

 RLのパワープレー成功率は王子が32・35%と7チーム中唯一の3割超えの数字をたたきだし、RL2位のハルラでも27・43%となっており、いかに好機を捉えたかがうかがえる。キルプレーでも王子は、79・31%でリーグ2位の阻止率を残していた。

 各チームの戦術練度がピークとなって火花を散らすセミファイナルはスペシャルプレーがそのまま勝敗に反映された。勝ち上がり、今季両チーム優勝のサハリン(2勝)とハルラ(2勝1敗)がそれぞれパワープレーで3得点、敗退した王子(1勝2敗)と韓国のデミョンキラーホエールズ(2敗)が同様に2得点という結果だった。

 プレーオフを終えて菅原監督はパワープレーに言及。「練習からやってきた形はできたが、なかなか結果に結び付かなかった」―。シーズン最終局面で発揮するべき攻撃パターンの精度向上が来季の雪辱に向けて一つの重要なカギを握る。

(連載は工藤航が担当しました)

プレーオフセミファイナル戦績
第1戦(2月22日)
 アニャンハルラ(韓国)●1―3 韓国安養
第2戦( 〃 23日)
 アニャンハルラ(韓国)○5―4 韓国安養
第3戦( 〃 25日)
 アニャンハルラ(韓国)●2―3 韓国安養

レギュラーリーグパワープレー成功率順位
 チーム               成功率
(1)王子イーグルス         32.35%
(2)アニャンハルラ(韓国)     27.43%
(3)栃木日光アイスバックス     24.80%
(4)デミョンキラーホエールズ(韓国)20.18%
(5)東北フリーブレイズ       19.80%
(6)サハリン(ロシア)       17.86%
(7)ひがし北海道クレインズ     15.74%

レギュラーリーグキルプレー阻止率順位
 チーム               阻止率
(1)アニャンハルラ(韓国)     85.22%
(2)王子イーグルス         79.31%
(3)栃木日光アイスバックス     77.97%
(4)ひがし北海道クレインズ     76.92%
(5)デミョンキラーホエールズ(韓国)76.85%
(6)東北フリーブレイズ       73.50%
(7)サハリン(ロシア)       73.33%

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