安全に実用化できる技術 コスト低減、法整備など課題も 苫小牧沖C02地中封入実証試験総括

安全に実用化できる技術 コスト低減、法整備など課題も 苫小牧沖C02地中封入実証試験総括
CO2分離・回収設備などを止めたままモニタリングを継続している苫小牧CCS実証試験センター

 地球温暖化防止の有効策として、国内外から注目を集める苫小牧のCCS実証試験。昨年11月までに二酸化炭素(CO2)30万トンの地中への封入を終え、国などが5月に公表した総括報告書で安全に実用化できる技術と結論付けた。一方、当初は地中の2層で圧入する計画だったが、うち1層はほぼ活用できず、シミュレーションの難しさも浮き彫りに。実用化にはコストの低減、法整備など課題も多い。改めてCCSと報告書の内容を詳報する。

 CCSは、カーボン・ダイオキサイド(二酸化炭素)キャプチャー・アンド・ストレージ(回収と貯蔵)の略で発電所や工場などで発生するCO2を回収して地中にためる技術だ。苫小牧沖での実証試験は国内初の大規模プロジェクトで2012年度から展開。経済産業省が日本CCS調査(JCCS)に委託した。苫小牧市真砂町に300億円以上を投じてプラントを建ててCO2の分離、回収、圧入、貯留、モニタリングを一貫で実施。16年4月からCO2を圧入し、19年11月に目標の30万トンに達した。

 同町の出光興産北海道製油所からパイプラインで供給される排ガスに、アミン溶液を化学反応させてCO2を分離、回収。陸上から3~4キロ離れた海底下の地層まで掘削し、管を通した上、CO2を圧入してためる。地層は海底下1000~1200メートルの「萌別層」、同2400~3000メートルの「滝ノ上層」の二つを使った。

    □  □

 報告書は経産省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、JCCSがまとめ、「CCSが安全かつ安心できるシステムであることを確認した」と結論付けた。安全面で特記されたのは18年9月に起きた胆振東部地震の影響。震度5弱相当の揺れを観測したが、CO2が地層から漏れ出すなどのトラブルは一切なかったという。

 一方、CO2の圧入量は、萌別層の30万110トンに対し、滝ノ上層はわずか98トン。滝ノ上層はシミュレーションと異なり、CO2の地層への浸透が限定的と判断し、圧入期間を2カ月間程度にとどめたためだ。JCCSの担当者は「心配していたようなトラブルはなかったが、事前の予測と異なる結果が出るのも実証試験の成果」と強調する。

 苫小牧は天然ガス採掘などを通して地質情報も豊富で全国115カ所のモデル地区から選ばれただけに、その可能性の高さは報告書にも明記。CCSは砂岩など隙間が多い地層で、上部にCO2を通さない泥岩など遮蔽(へい)層があることが必須だが順調にCO2を圧入できた萌別層は、貯留可能量4・86億トンと推定した。

    □  □

 実証試験を基に実用化モデルのイメージとして、CO2を年間100万トン圧入する大規模設備のコストも試算した結果、1トン当たり単価は7261円。海外CCSで価格を公表しているカナダ・アルバータ州の6946円(パイプライン設備費と労務費を除く)とほぼ同等で、担当者は「まだ研究途上。実用化にはさらにコスト低減が必要」とみる。

 「苫小牧CCS」は陸上から沖合の海底にCO2を圧入する世界初の事例だが、CCS自体はすでに世界各国で導入が進んでいる技術。日本にはCCSに特化した法令がなく、実証試験は設備の種類などによって、各種法規制で対応した。海外ではCCSの法的責任などが整備され、導入で税控除や補助金が受けられる国も。日本ではCCSの認知度が低く、機運の醸成も鍵を握りそうだ。

 「苫小牧CCS」は地元関係者の理解で試験が順調に進み、JCCSも現場見学会や講演会、子ども実験教室などを通して積極的に情報発信してきた。現在はCO2の分離・回収設備などを停止したまま、モニタリングを継続しているが経産省が構想するCO2の再利用策、カーボンリサイクルの実証試験への転用も考えられるとあり、「苫小牧CCS」は引き続き注目されそうだ。
(金子勝俊)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る